BOOK Review――この1冊 『現代経済学の直観的方法』(2/2ページ)
BOOK Review 担当編集
2020/08/26
テーマ自体はそれなりに難しいが、閑話休題的なエピソードも差し込まれており、気負わず読める。
例えば、イスラム社会の「喜捨(きしゃ)」による富の再分配について解説する文脈のなかでは、スーダンで過去、スーダン大卒男子の平均年収の800年分を喜捨で稼ぎ出した「プロの乞食」がいたことに触れられており、驚くと同時にちょっと笑ってしまう。こうした余談が散りばめられているので、読み物としても非常に面白い。
理系的な知識、価値観のみに立脚するのではなく、歴史や哲学など、経済学に関連するあらゆる学問領域に踏み込みながら議論が展開されるので読み応えがあり、経済を立体的に理解する助けにもなる。何より、抜群にわかりやすいのがいい。
「大人が読む経済学の教科書」として、文句なしの完成度。いつでも読み返せるよう、座右の1冊として大事にしたい。
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ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集
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