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BOOK Review――この1冊 『アイヌと神々の物語』 炉端で聞いたウウェペケレ(2/2ページ)

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一方で、人間を殺した熊はもはや大事にすべきカムイではないとみなし、手厚く葬ることはせず、朽ちた木の側に打ち捨てて糞尿を浴びせて罰を与えるなどゾッとさせる描写もある。

自然や、自然に宿るカムイへの畏敬の思いや親しみの感情と、アイヌに災いをもたらす悪いカムイに対する怒り。これは、自然へ向けるまなざしの大らかさと厳しさと言い換えることもできるだろう。このあたりに、北海道の大自然の中で生きながらえるためにアイヌが培ってきた精神性を読み解くヒントがあるようにも思える。

北海道の冬の夜、囲炉裏の火を囲みながらおばあちゃんの話に耳を傾けるアイヌ子どもたちを想像すると、微笑ましく文字をもたいないアイヌ民族が、自分たちの歴史や文化を未来に託すために語り継いできた物語の力強さとあたたかさを感じる。

ウウェペケレが描く、躍動的に生きるアイヌの姿は、現代の私たちにも、明るく強く生きる元気を分け与えてくれる。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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