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BOOK Review――この1冊 『教養としての落語』立川談慶/著(2/2ページ)

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「人間の失敗図鑑」と表現されることも落語の多くは、異性にモテたい、ちょっぴりズルをして得をしたいなど、言ってしまえばくだらない目的のため、右往左往する庶民の姿を描いている。そうした、人間のダメなところにも光をあて、「しょうがないねぇ」と笑い話にするのが落語だ。「ダメなところも含めて人間だ」と受容する、大らかな精神が生んだ庶民の娯楽。だからこそ単なる失敗談で終わらず、どこかあたたかな人間味を感じさせるのだろう。

著者は、吉田が歴史に名を残す人物になりえたのは、類まれな政治手腕のためだけでなく、落語に親しみながら人情の機微を学び、人の心をつかむ術を身に着けたからではないかと推察する。いくら才能があっても、結局、人がついてこなければ、何かをなしえるのは難しいのだ。

巻末では、初心者でも気軽に落語に親しめるよう、YouTubeで落語を視聴する際の検索の仕方なども紹介。何本か動画を視聴するうち、好きな演目や好きな落語家をみつけるのも、この本の狙いであり、落語を聞く醍醐味の一つだろう。

ケラケラ笑いながら、人間としてもビジネスマンとしてもステップアップできるのだから、落語に親しまない手はない。本書は、「興味はあるけど、敷居が高い」と感じている人や、「何から学べばいいかわからない」と思っている人たちに、落語の世界への扉を開いてくれる一冊だ。

『教養としての落語』立川談慶/著
サンマーク出版刊
1400円+税

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

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