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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

"メンタルの強さ"は人を幸せにするのか?(1/3ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2022/03/17

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イメージ/©︎azur13・123RF

北京で行われていた第24回冬季オリンピックが閉幕した。

中国での開催とあって、開幕前から政治的局面を感じさせる参加各国政府の対応をよそに、いくつもの感動を与えてくれた選手たちに先ずは感謝の意を表したい。

そんななかでも、観衆の心を痛めたシーンも多く、とりわけ話題となったのは、やはり女子フィギュアスケートのロシア(Russia Olympic Committeeオリンピック委員会)代表、カミラ・ワリエワ(15)選手だろう。

昨年12月に発覚したドーピング事件の結果、陽性反応が出たにも拘らず競技への出場が認められたが、最終順位は4位に終わった。フリーでの彼女の演技には、痛々しささえも感じられ、若干15歳という年齢も相まって何とも言えない後味の悪さを残した。

日本選手では、スノーボード男子ハーフパイプに出場した平野歩夢選手が、金メダルを獲得したものの、決勝での採点に世界中がブーイングを発するなど、ほかの競技においても、採点に関する不満の声が多く聞かれたのもこの大会の特徴だった。

極めつけは日本女子ジャンプ界のエース、高梨沙羅選手の混合団体。なんとスーツの規定違反による失格!? これはもう、「何故???」としか言いようのない、高梨本人以上に日本中、いや他国のジャンパーたちにも驚きと動揺を禁じ得なかった。

そんな悲劇のヒロイン、高梨選手について、あくまでも拙者個人の勝手極まりない感想を綴ることをご容赦いただきたい。

我らが“沙羅ちゃん”は、2014年ソチ大会では4位、2018年平昌大会では3位で銅メダルを獲得し、それなりの存在感は示したのであるが、彼女にはソチでも平昌でも金メダルを獲れる実力は十分に備わっていたはずだ、というのが拙者の見立てである。勿論根拠はそれまでに幾度となく優勝を飾っていたW杯での圧倒的な戦績が物語っている。

であるのに、何故かオリンピックでは勝てない。拙者、実は自身のブログにソチ大会後、高梨選手のメンタルについて私見を述べた過去がある。だから、三度目の正直となるはずの今回、北京の空に日の丸がてっぺんにはためくことをとても期待していた。 

しかし、個人ノーマルヒルは4位に終わり、拙者の期待は夢と消えた。そこで改めて高梨選手のメンタルについて考えてみた。 

いずれも高梨選手の競技終了後に、テレビ局のインタビューや選手自身のコメントで語った彼女の言葉から。 

ソチでは、「このオリンピックで初めてプレッシャーの恐ろしさを感じました。今までは(過去の大会・W杯や日本選手権など)プレッシャーを掛けられるたび、期待を力に変えることができた」と。4年後、平昌においては、「やはりまだ自分は金メダルをとる器ではないと分かりました……」と答えていた。

そして北京。個人ノーマルヒル終了直後、「いろんな感情が自分の中で混沌としていて言葉にするのが難しい状態ではありますが、一つ言えることがあるとすると、この4年間で、いろんな方たちに支えていただいたおかげでジャンプすることができていたのですが、、結果を出せず申し訳ない気持ちでいっぱいです。恩返しできなかった自分がただただ悔しい」と涙を滲ませて言葉を絞った。


イメージ/©︎vicnt・123RF

高梨選手は若干15歳から国際大会に出場。常に競技ができることへの感謝を、「周りの人たちのお陰」であると言い続けてきた。その謙虚さと風貌は多くの日本人の心を惹きつけたのも当然だろう。

しかし、拙者はその奥ゆかしさ故に過剰なまでの期待を背負う心理状態が、特に注目度の高いオリンピックという最高の舞台で真の実力が発揮できないという「結果」に、はっきりとした因果関係を見るのである。

その証拠に、これまでも繰り返されてきたことではあるが、北京オリンピック終了直後の3月2日、通常なら心の傷を癒しきれない最悪の状態で出場したノルディックスキー・ワールドカップのジャンプ女子個人第14戦において、高梨選手は1本目で130m、2本目で132mを飛んで、今シーズン2勝目、W杯通算62勝目を挙げた。

そのインタビューで、「久しぶりに飛べて、純粋に楽しいという気持ちで試合に臨めた。自分の力ではなく、周りの人の力で勝ち取れた。オリンピックの後ということもあり、今までの中で一番うれしい優勝になった。(共同通信)」と答えている。

優勝したから当たり前の言葉と思われるかも知れないが、重要なことは、「純粋に楽しい」気持ちで飛んだという、彼女の本音、安堵の心境の下で発揮する実力である。

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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