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タワマンが建ち並ぶ「豊洲」で勃発 裁判沙汰にまでなった町会内紛劇(2/2ページ)

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町に関心を持ち始めた「キャナリーゼ」たち

豊洲町会もこうした委任状による運営がなされてきたが、新住民らが実権を握ってからもこの構図に変化はなかった。しかし、これにストップをかける人たちがいた。

10年ほど前、運河のある豊洲に住み、豊洲のショッピングモールを闊歩する20~30代の女性たちは「キャナリーゼ」と呼ばれ、たびたび女性誌などで取り上げられた。この当時の彼女たちは、町会活動に無関心な人が多かったが、時が経ち自分の住む町に関心を向けはじめた。このキャナリーゼたちも町会運営に疑問を持ち、異議を唱え、旧住民とともに声を上げはじめたのである。


豊洲町会の文書

具体的には、現在の町会長と対峙する事に転じた元会計監査の担当らが、総会において会則の改定などの議案について、きちんとした扱いがなされていない等の異議を唱えた。しかし、現町長派に押し切られてしまう。

そこで反対派はこの議決を「無効」として、監査担当者の罷免の取り消しや従来の会則に沿った町会運営(選挙や会計監査の実施)を求め裁判所に仮処分等(本訴もあり)を求めた。裁判所ではほぼ申請の通り仮処分決定がなされ、現在は本訴が進んでいる。

この「原告」となったのが旧住民と町会の運営に疑問持つ新住民たちで、いわば新改革派住民たちである。そして、新改革派住民は「豊洲町会を考える会(以下、考える会)」を立ち上げ、現町会長と対峙、裁判でも勝ってきた。

一方、現町会長派もこれを不服として、町会長が仮処分決定に異議申立てを訴えが、この仮処分異議申立ては退けられ、訴訟においては考える会のワンサイドゲームに近くなってきた。

マンモス町会の分裂――その原因とはいったいなんだったのか?

この裁判の勝利に勢いを得た考える会は「裁判所の判断に沿った会長改選選挙を」とさらに要求する。こうしたなかで、現町会長派は、どんでん返しの手を打つ。

11月7日に開かれた豊洲町会の臨時総会に町会長側の弁護士を同席させたうえで、裁判で「連敗」したはずの現町会長派が、町会運営に無関心な人の委任状を集めた成果なのか、「町会長は役員の互選で決まり選挙はしない、役員数は不定数、監査の外部発注による会計監査機能の変更」といった町会会則などの変更を形式上は決議してしまった。

そこで11月27日、考える会は「豊洲地区自治会」(第二町会)の設立のための第3回の設立会議を開催。この豊洲地区自治会には豊洲町会から排除されている都営住宅の住民もメンバーの中心にいる。

来春発足予定の豊洲地区自治会に集まったメンバーは新住民ばかりでなく、旧住民や都営住宅に住む高齢世帯、豊洲の道端の花壇を毎日世話するボランティアなど新旧関係なく多彩な住民が参加している。そして、豊洲地区自治会では21年12月から豊洲地区自治会の会員集めに動き出している。

とはいえ、問題もある。

現在、豊洲町会にマンションが丸ごと入っている大型物件のなかには、個人単位で「豊洲地区自治会」(月額200円)に加入すると、マンションの管理費から豊洲町会に一戸あたり月額300円の町会費が払われているため、町会費の二重払いになってしまう。個別に豊洲町会を抜けようにも、マンションの管理組合の規定で抜けられないのだ。

もちろん、豊洲町会に積み上げてきた3000万円以上の町会費はそのままで新しい豊洲地区自治会に引き継ぎ、あるいは分配される可能性はいまのところない。また、「公明正大な選挙で自治会のトップを選ぶ」という点をどう会則に盛り込むかもポイントのひとつになりそうだ。

オフィス、タワマン、ショッピングモールが建ち並び、トレンドな町としてのイメージが強い豊洲で起こった町会の内紛の原因はいったいなんだったのか――。

それは非難を受けて、法廷に呼ばれた町会長に対する不満だけではあるまい。その町会に属する3500戸の住民たちの地元自治会への無関心が3000万円以上の町会費を抱えた大町会の迷走に拍車をかけてきたと言えるのではないか。

少子高齢化、人口減少が進む一方で、多様化するニーズに対応するには、住民参加が欠かせない。しかし、実際には無関心な人が多いのも事実。その典型例がこうした町会活動や、マンションの管理組合だろう。いま一度、自分の生活圏に関心を持ち見直してみてはどうか。


タワマン、オフィスビル、ショッピングセンター、いまだ開発が続く「豊洲」/©︎OGW417Studio 

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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