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人権との闘い――LGBTを取り巻く“住まいの現状”(4/4ページ)

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企業が行うLGBTへの働きかけ 社内サポートと社外サポートの両輪が必要

LGBTフレンドリーと宣伝しているから信じて問い合わせをしたら、窓口対応した従業員に全く知識がなくトラブルになったケースは過去にもあったという。偏見があるなか、勇気を出し信じて行動をしたのに、裏切られたと感じた場合のショックは大きいだろう。

そして世間で大きくつながれないLGBTの人たちは、SNSの世界でつながっているという。そういったところで発信すると、噂は瞬く間に広がりTwitterなどで炎上することも少なくない。悪い意味で、企業の情報が出回ってしまう恐れもある。

「当事者たちは性的な部分が大多数の人たちと違うだけで、差別的、侮辱的な扱いを受け傷ついた経験があったり、またそれを回避するために警戒心が強く敏感です。接してくる人や企業が、自分たちのことを本当に傷つけないでサポートしてくれるのか、信用できるものなのかと警戒していることは事実だと思います。現在のSUUMOやLIFULL HOME'Sのような取り組みが進むことは素晴らしいことである反面、全国の不動産に関わる企業や事業者が、適切な知識を持たないままLGBT当事者へ向き合うことが本当にできるのか不安です」(三浦さん)

時代の流れに乗ろうと、知識を得ることもなく単に「LGBTフレンドリー」と謳って付刃にプロモーションすることは、二次被害を生むだけでなく、企業ダメージにもなり得る可能性もはらんでいる。

このようなことからカラフルチェンジラボでは、企業への講演や企業研修を通し、単に男女カップルと同等に扱えばよいのではないこと、当事者が本当は何を求めているのか、企業主体で進めると陥りやすい問題点などを指導しているのだ。

LGBTが住みやすい社会は誰にでも優しい社会

カラフルチェンジラボでは、LGBTの住まいや引っ越しをサポートする「みんなのすまいプロジェクト」を進めてきた。

そして、16年より共に活動を進めてきた、福岡で70年の歴史のある三好不動産と進めてきたLGBTの住まいの支援を広げ、全国の「実態あるLGBTフレンドリー企業」を支援し、パートナーシップを行っている。

「LGBTが住みやすい社会は、誰にでも優しい社会だと信じています。LGBTの話は性的少数者の話ではなく『性』の話。全ての人が持って生まれてきている性の課題は、人間の生きていく本幹の話です。今の日本では、女性軽視や男性優位社会という流れもまだあり、女性の生きにくさや男女差別問題も複合的に課題が混在していますが、レズビアンやトランスジェンダー(女性)なども女性の話であり、現在日本が抱えている課題のなかにLGBT当事者もいるのです」(三浦さん)

反対に、男性は社会から求められる「男らしさ」や、責任など、暗黙に求められる性的な役割からくる、「息苦しさ」を男性自身も感じているのではないだろうか。そろそろ男女平等を本気で考える時期なのかもしれない。LGBTの課題への取り組みが大きなヒントになるのではないだろうか。

21年、期待されていたLGBTに関する法案の国会の提出は見送られ、依然としてLGBTの人々を差別から守る法律は実現しない。マイノリティを認める社会は、誰にとっても生きやすい社会になるのではないだろうか。そして誰もが等しく、自分の住む場所は自ら決める権利があるということが当たり前になってほしいと切に願う。

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この記事を書いた人

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