ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

人権との闘い――LGBTを取り巻く“住まいの現状”(2/4ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

NPO法人カラフルチェンジラボが進める活動

「私自身09年、ちょうど30歳を機に『自分らしく生きていきたい』と、LGBTであることをカミングアウトしました。当時はLGBTという言葉も、LGBTが人権であるという感覚もまだ世間にはありませんでした。私にとって自分らしく生きていくということは、俗に言う、おねえタレントのようにテンション高めなキャラクターとして存在することが、生きやすい方法だったのです」

優しい口調で語る三浦さんは、「あなたののぶゑ」というキャッチ―な名前で活動し、「のぶゑちゃん」として九州を中心に知名度を獲得している。そして、その知名度や人脈がNPO法人としての活動につながる結果となっているのだ。


ともゑちゃんこと 三浦 暢久さん 写真/三浦さん提供

カラフルチェンジラボの活動は、交流会や相談会のような当事者の直接的支援ではない。

メイン事業として、企業に対するLGBTの情報提供や取り組みのサポートを行う。もう一つの大きな柱として、日本主要都市で開催されるLGBTQ啓発の最大イベント「レインボープライド」の九州版を主催し、企業協賛を募っている。15年から開催を引き継ぎ、コロナ禍のためオフライン開催の最後となった19年には、1万2000人が会場に集まり、LGBT当事者1200人が福岡博多天神エリアをパレードするというビッグイベントとなったそうだ。

この一大イベントを主催していくなかで当事者の声が集まり、「みんなのすまいプロジェクト」や、さまざまなプロジェクトへ派生することになる。その活動をまとめるために、18年にNPO法人化に至ったという。

LGBTの住まい問題 当事者でしか分からない偏見

ゲイやレズビアンカップルに、住まいの問題があると考える人がどれほどいるのだろうか。私自身、例えばシングルマザーだと、就労や金銭的問題、子どもの問題など、住まいに困ることは容易に想像がつくのだが、LGBTの住まい問題と聞いてピンとこなかった。

しかし、現実は残酷なほどに違っていた。当事者にしか分からない偏見がまだこの時代においても根強く残っていたのだ。

リクルート住まいカンパニーによる、SUUMO「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」の調査結果によると、(調査対象:30~69歳の全国の男女、賃貸に利用する不動産を所有している人のうち、所有する賃貸用不動産の住戸数が4戸以上の不動産オーナー 有効回答:1024人)LGBTを「応援したい」というオーナーは37%と公表されている。しかしその反面、約38%のオーナーが「住んでほしくない」とも答えている。また、男性同性カップルの入居を断った経験があるオーナーは8.3%、女性同性カップルの入居を断った経験があるオーナーも5.7%いる状態が明るみになった。数字のマジックで、これは少なく思えるのかもしれない。だが、安定した収入や職があり、なんの落ち度もない人たちが住みたいと願った部屋に住めない可能性が、多少なりともあるということだ。

LGBT本人が不動産会社のカウンターへ行って、カミングアウトしたときの反応では、「そういう方が住めるお部屋はない」と言われることも少なくないという。それは、精神的苦痛であり、契約できないという現実問題となる。 

ようやく最近ではLGBTの認知も向上し、契約により手数料が利益となる仲介業者側の受け入れは増えてきているようだが、問題は不動産会社のカウンターだけで解決するわけではない。その先にいる管理会社はオーナーに直結しているので、「この二人はどういう関係か」と詰めてくる。二人入居可の物件で、結婚前提のカップルであれば喜ばれるべきところを、男性同士、女性同士のカップルになると問題視されるのだから不思議だ。

「男性同士で借りたいというと、住居以外に事務所として使用されるのではないか、何かトラブルを起こすのではないか、部屋を汚したり騒音問題につながるのでは、と管理会社がオーナーに確認する前に断られるケースも多いんです」(三浦さん)

このように、不動産会社のカウンターや管理会社の審査で断られるケースを含むと、実際のデータよりさらに多くのLGBTの人たちが住まい探しで苦労していることが伺える。

次ページ ▶︎ | 日本社会は「結婚して一人前」 LGBTのヒエラルキーとは

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

ページのトップへ

ウチコミ!