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住宅業界が懸念する「ウッドショック」とは 輸入木材がコロナで予期せぬ高騰(2/2ページ)

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国内への影響、今後はどうなる

そこで、国内の木材価格への影響も数字で見てみたい。

述べてきたとおり、現在、輸入木材は価格が高騰、品薄となり、それが国産木材への需要を呼び、こちらも価格が急上昇しているというのが、目下報じられている内容だ。

参考として、農林水産省の「農林水産統計・木材流通統計調査・木材価格(令和3年3月)」の数字を紐解いてみたい。

ここでデータが挙がっている「製材用素材価格・合単板用素材価格」は、「まつ中丸太」「すぎ小丸太」など、10種類に及ぶ。

このうち、21年3月の価格が前年同月を上回っているものは半分を超え、7種類となっている。なお、数値としては「まつ中丸太」の109.6%が最大で、次が「ひのき中丸太」の前年同月比106.2%となっている。すなわち、1年を通しての上昇分としては、今回のウッドショックに絡んでの各報道を見るほどのインパクトには、ほぼ達していない印象だ。

もっとも今後については、予断は許されないだろう。

輸入木材や国産木材が、輸入・生産されたあと、加工・商品化され、消費者の手に渡るまでの間には、各段階での需給が存在する。それを担う需要家は、市場を混乱させないようある程度の負担を払い、ショックを和らげてはくれるはずだ。

が、いよいよ限界を超えたときはそうもいかない。当然ながら、異変は“川下”でも顕在化することになるだろう。

すなわち、冒頭の話に戻るが、マイホームや投資物件の新築を近く予定している人は、ぜひ今後の動向には注目をしておいてほしい。

一方で、今回のウッドショックに関連して、国産木材流通への関心が業界内でにわかに高まっていることは、よいかたちでの影響といっていい。

住宅に関しては、人口減少とも相まって、日本はすでにストックがあふれる社会となっている。

国外から木材を次々と輸入し、建物と廃棄物を増やすのではなく、生じた更新分を自国内の資源で丁寧に補いながら、林業サイクルを回していく方が、おそらく国民と国土、環境を併せてのメリットは大きいはずだ。

日本の何倍もの惨状を呈するコロナ禍も、いまや力でねじ伏せんばかりのアメリカや中国の経済は実に頼もしいが、日本は日本である。

われわれなりのコロナを奇貨とする上手な変化の方法が、おそらくは、さまざまな分野に存在するはずである。

 

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