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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#20 コロナ終息までホテルは生き残ることができるか (3/3ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2021/02/16

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投資の世界は弱肉強食 「買い」のチャンスか

ポスト・コロナにおいて宿泊業界が再出発をする際に、むしろ気を付けたいポイントは宿泊需要の変化だ。コロナ禍において、多くの企業で出張を問い直す動きが顕在化していることだ。

オンライン上での会議を行うことを余儀なくされた多くの企業では、逆に社内会議程度であれば、十分できるという認識を持つに至った。たとえば本社と支社、あるいは子会社間の会議ではこれまで互いが出張をして顔を合わせてきたのが、Zoomで済ませるようになると出張そのものが削減される。これはビジネスホテルにとっては相当の痛手になりそうだ。ただでさえ、今後の日本は人口減少の影響でビジネスに携わる人の人口が減少することが予想されていることから、今後多くのビジネスホテルで経営に苦しむところがでてきそうだ。

都内や大阪、名古屋といった大都市のシティホテルは宿泊客に加えて宴会客が消滅し、婚礼の延期やキャンセルが陸続して阿鼻叫喚状態だ。もともと人員を多く抱えるシティホテルにとって、コロナ禍による移動の自粛や宴会の消滅が長引くようになれば、まずは財務体質の弱い地方の老舗ホテルなどが経営危機に陥る可能性が大きい。だが、大手のホテルは本業とは別にオフィスビルなどを併設しているところも多く、コロナ禍が収まるまでの冬ごもりはできそうだ。

またリゾートホテルなどは、Go Toのはじまった7月以降潤ったホテルが多かった。海外旅行に行けなくなった富裕層が予約しているもので、都会の「密」を離れてリゾートでのんびりしようという需要が一部顕在化したのだ。だが再度の緊急事態宣言は、一時的に回復したリゾート需要にも再び冷や水を浴びせることになっている。

宿泊業界はおそらくこの2、3年は冬の時代が続くかもしれないが、この期間淘汰される宿泊施設のうち、優良な資産を仕込むチャンスでもある。すでに一部のキャッシュリッチな企業や投資家は、倒れそうなホテルや、旅館の不動産や運営会社そのものを狙い始めている。屍はきれいにお掃除され、再びお化粧直しされて数年後に登場する。投資の世界は弱肉強食。これからの数カ月は「買い」のチャンス到来と言ってよいだろう。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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