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コロナ禍1年、我慢の限界に達したホテル業界 近鉄、藤田観光など名門ホテルを売却、新興勢力は撤退、業態見直しへ(1/3ページ)

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椿山荘/mikimaru・写真AC

近鉄、西武、藤田観光――相次ぐホテル売却、それを狙う外資系ファンド

コロナ禍が1年を超え、鉄道系名門ホテルと京都系の振興ホテルがホテルを手放す危機に立っている。

「都ホテル」などを持つ近鉄グループホールディングス(以下・近鉄HD)は3月、関西地区など8つのホテルを米投資ファンドのブラックストーン・グループに売却すると発表した。

長引くコロナ禍で主力の鉄道収入が落ち込んでいるうえに、訪日客のストップで近鉄系列ホテルの苦境は厳しい。そのため近鉄HDは1兆円を超す有利子負債を抱え「都ホテル京都八条」(京都市)など、国内外で運営する宿泊施設の3割をまとめて数百億円規模で処分を決定したわけである。なお、ブラックストーン・グループの日本におけるホテルの大量取得は初めてという。

民鉄としては営業キロ数が日本一長い近鉄は、これまで京都、奈良、大阪、名古屋、伊勢・志摩など外国人に人気のある観光地を結び、各地のホテルやリゾート施設で収益を上げてきた。

しかし、近鉄だけではないが、本業の鉄道事業は沿線の人口減少や利用者の高齢化に伴い、終電時間の変更や間引き運転をするなどの対応を行い、リストラも余儀なくされている。そこに襲いかかった新型コロナによってさらなる取り組みが求められた。

実際、このコロナ禍で近鉄HDの21年3月期は780億円程度の最終赤字の見込みとなったことで、ホテル処分に踏みきった。おまけに、不振の旅行会社(近畿日本ツーリスト)を抱える子会社のKNT-CTホールディングスは20年末に債務超過に陥っている。

こうした近鉄の鉄道とホテル・観光事業という似通ったビジネスモデルを展開しているのが西武ホールディングス(以下・西武HD)だ。

同社は21年度第3四半期決算説明において、「アセットライトな事業構造へ転換」を掲げた。アセットライトとは「形ある資産を持たない」という意味で、なかでも注目されるのは、このコロナ禍によって西武HDも資産の切り出し、ホテル事業の再編に踏みきるかという点だ。そのためホテル業界や投資ファンドは、西武系の主要なプリンスホテルの処遇がどうなるかを注視している。

また、「ワシントンホテル」の全国展開で知られる藤田観光も、社員の基本給を最大16%カット、家電量販「ノジマ」への社員の出向、希望退職に300人以上が応じたこともあり、その動きが注目されている。

藤田観光の20年12月期の最終損益は過去最大の224億円の赤字に転落した。「創業以来最大の危機」を乗り切るため、関西を代表する結婚式・宴会施設「太閤園」(大阪市)の売却を決めた。藤田はほかにも全国に宴会施設や宿泊施設を保有しているが、なかでも潤沢な買収資金を持つ外資系ファンドからその動向が注目されているのが、結婚式・コンベンション施設を持つホテル「椿山荘」の扱いだ。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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