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「HARUMI FLAG」住民訴訟に新たな動き 不動産鑑定士たちが指摘する激安価格のカラクリと問題点(2/3ページ)

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国策不動産鑑定会社「日本不動産研究所」?

129億6000万円(1㎡あたり9万6800円)という鑑定額を出したのは都から依頼を受けた「日本不動産研究所」という一般財団法人である。この日本不動産研究所は、鑑定士制度発足の際に所管の旧建設省と旧大蔵省がつくったもので、全国8支社41支所及び上海子会社を持ち、不動産鑑定評価、不動産証券化に伴う鑑定評価、動産・インフラ評価、海外不動産評価などを行っている。現在の理事長は元国土交通省の出身だ。そして、HARUMI FLAGの評価額はこの日本不動産研究所が出した「調査報告書」が事実上の不動産鑑定書になっている。

ちなみに、今回この評価に疑義を呈している不動産鑑定制度研究会も、数理・統計にもめっぽう強い理論肌の不動産鑑定士がおり、日本不動産研究所にとって「目の上のたんこぶ」とされる。この報告書は、「不動産鑑定の実務者から分析すると、故意か過失か、大変ずさん」(不動産鑑定制度研究会関係者)というのだ。

報告書で指摘される疑問点は次のような点だ。

1)土地価格を算出するのに荒っぽい開発法のみを使っている
2)土地価格を決める場合に重要な取引事例比較法を無視
3)周辺にある東京都地価調査価格(東京都中央区の「中央-3」の㎡単価95万円)との比準(比較)をしない
4)仮に売り渡し価格を激安にできる開発法を認めたとしても、そこで求めるべき素地価格のベースに、誤って収益還元法を採用した(収益価格からさらに販売費および一般管理費を差し引きすることによってコストの二重計上をして故意に安くする単純ミスを重ねている)
5)収益還元法に採用されている住宅店舗賃料は、極端に低い賃料事例を用いて計算している
6)そもそも開発法に採用されている分譲事例価格そのものも極端に安く、逆に採用された建築工事費を高く設定。結果、処分価格が極めて安くなっている
7)都有地のため一部しか路線価は設定されていないが、推定される固定資産税課税標準額よりはるかに低い価格で処分された(時価を超える部分への固定資産税課税を否認した最高裁判例趣旨に違反)

ここであげた疑問点は一部で、報告書にはこのほかにもいくつもの疑問点が指摘されている。

次ページ ▶︎ | 激安を可能にしたいくつもの仕掛け 

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この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

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