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「HARUMI FLAG」住民訴訟に新たな動き 不動産鑑定士たちが指摘する激安価格のカラクリと問題点(3/3ページ)

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激安を可能にしたいくつもの仕掛け

さらに激安販売を可能にしたカラクリはまだまだある。

そのトリックは、複雑で込み入った街区の再開発に多用させる「市街地再開発事業」という制度をわざわざ、唯一の地主である東京都が広大地の「再開発」に持ち込んだ「ひとり再開発事業」だった点だ。

つまり、HARUMI FLAG選手村開発は東京都(舛添要一前知事)が、再開発用地の地主、再開発許認可の当局者、そして再開発事業の施行者という異例の「一人三役」を演じることになって、いかようにもできるになっているのだ。この点については、都の監査部門も意見している。

さらに引き渡し価格激安にするためのトリックは続く。

市街地再開発事業による土地の処分には、都市再開発法80条において、近傍類似の土地等の価格を考慮して定める規定がある。だが、権利者全員(晴海の場合は東京都だけのひとり再開発事業)の合意があれば、任意の価格で売買できるのだが、都はこの権利すべて持っているためこの規定を使って、都の一存で法外な安値も販売を決め、売った後はさっさと再開発事業から退出した。

都議会や都の財産価格審議会も安値販売を問題にしていない。しかも、都は選手村の基盤整備等に数百億円を投入した上、選手村の家賃も負担するので、それらも上乗せされ売却した東京都の赤字は増えることになる。

「土地の取引事例の記載が全くなく、周辺にある地価公示価格・基準地価格も全く無視して更地価格を求めている不動産鑑定書を妥当な鑑定書として国土交通省は認めるのか」「業界団体の日本不動産鑑定士協会連合会は、そうした不動産鑑定書が横行することを許すのか」と複数の不動産鑑定士は、疑問点を指摘する。

あの「森友問題」でも鑑定士とその業界団体は重要な「役割」を演じてきた。それと同じ構図の疑問が東京五輪という平和の祭典という国際イベントでも浮上している。この問題について東京都はどう答えるのか。

 

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この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

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