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インバウンドどころか国内客もいなくなった宿泊業界の阿鼻叫喚

牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#15 インバウンドどころか国内客もいなくなった宿泊業界の阿鼻叫喚(3/3ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2020/04/02

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宿泊業界に存在する 5つのリスクとは

ホテル業界には5つのリスクがあると言われる。1つが景気変動リスクだ。経済活動が振るわなくなれば出張者が減少し、宿泊や宴会需要が落ち込む。2つが政治リスクだ。近年お隣りの韓国とゴタゴタが生じた結果、インバウンドの主流の地位にあった韓国人訪日客が激減。とりわけ九州や大阪などの宿泊需要に影響が出た。3つが災害リスクだ。最近時頻発する地震やゲリラ豪雨、台風などの気象リスク。火山の噴火など自然災害は宿泊業界には脅威となる。4つがテロや戦争リスクだ。95年に起こった地下鉄サリン事件はまだ記憶に新しいが、こうしたテロや戦争は観光需要などを一気にしぼませる。そして5つが今回の疫病リスクだ。実はホテル業界ではここ最近でもSARSやMARS、新型インフルエンザといった疫病の影響で成績を落とした年を経験している。

だが、今回の新型コロナウイルスの惨禍は過去の疫病リスクを超越しており、この影響は意外と長引くことが懸念されている。そしてこの問題が厄介なのは、世界全体にウイルスが蔓延することで世界経済に大きな打撃が及んでいることだ。疫病リスクと経済リスクが同時に起こってしまった現在の状況はこの問題の深刻さを物語っている。

我が世の春を謳歌してきた宿泊業界にいきなり到来した極寒。生き残りに向かっての試練が続きそうだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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