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『BLUE/ブルー』/松山、東出、柄本、それぞれが演じる挑戦者のかたち(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2021/04/02

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迫力満点のボクシングシーンと織りなすドラマ

松山、東出、そして柄本も見事に体を作り上げ、ボクシングシーンは迫力満点。だが、本作の見どころは、4人の織りなすドラマにこそある。

瓜田は誰よりも努力し、ボクシングに情熱を注いでいるのだが、どうしても勝つことができない。小川は持ち前のセンスと才能でチャンピオンの座に近付いていくが、タイトル戦の直前に脳の障害が見つかる。千佳は瓜田と小川の間にいて、心が揺れている。楢崎はただモテたい一心でボクシングを始めたが、その魅力に憑りつかれ、のめりこんでゆく。

彼らの関係は少しずつ変化してゆき、そこには憧れと嫉妬、友情と恋心といったさまざまな思いが交錯する。

非凡と平凡、プロとアマ、そして理想と現実。たとえ自分の立場がどうあろうと、4人は前に進み続ける。一つの事を追い求めるのはつらく苦しい。しかし、彼らはあくまでも自然体で立ち向かっていく。彼らの姿を熱い根性論で描くのではなく、ごく穏やかに、どこにでもありそうな風景として描いているところが本作の魅力である。本来、好きなことに没頭するのは楽しいはずなのだ。観客は境遇のまるで異なる4人の内の誰かに自分と重なる部分を見つけ、声援を送ることになるだろう。

ボクシングでは、青<ブルー>コーナーに挑戦者が立つ。好きな事に熱中し、それを続ける者は皆、青コーナーに立つ挑戦者だ。本作はそんなすべての挑戦者に捧げられた応援歌である。


『BLUE/ブルー』
監督・脚本:吉田恵輔
出演:松山ケンイチ/木村文乃/柄本時生 / 東出昌大
配給:ファントム・フィルム
4月9日より公開
公式HP:https://phantom-film.com/blue/

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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