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『アルキメデスの大戦』

「悲劇の戦艦大和」とは違ったアプローチで描かかれた反戦争映画(2/3ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2019/07/27

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そんな折、山本はふとしたことから100年に一人の天才と言われる東京帝国大学出身の数学者・櫂(菅田将暉)と知り合い協力を依頼するが、櫂は数学を溺愛する変人であるとともに大の軍隊嫌いで、協力しようとしない。しかし、櫂は山本の「巨大軍艦が建造されれば、その力を過信した日本は必ず戦争を始める」という言葉に衝撃を受け、帝国海軍の中へ飛び込んでゆく決心を固める。巨大な圧力と妨害工策の中、櫂は巨大戦艦「大和」の建造を阻止するべく奔走する。

数学者を主人公に据えて第二次世界大戦を描くというユニークな戦争映画である。菅田将暉演じる天才数学者・櫂は、数学的観点から巨大戦艦建造計画の問題点を明らかにし、計画の中止を主張する。彼の動機は、決して日本を戦争に向わせてはならないという強い思いである。推進派との丁々発止の攻防はスリリングだ。

緊張感あふれるシーンが続くが、櫂のキャラクター造形が愉快で、その描写がコミックリリーフ的な役割を果たしている。数学と美をこよなく愛し、何でも測りたがる変わり者。いつも巻き尺を持ち歩き、美しいと感じた物すべてをその場で計測しなければ気がすまない。美しい女性も例外ではなく、他意なく計測させてほしいとお願いするので、当然ながら周りから誤解を招く。そんな櫂に反発を覚えながらも徐々に傾倒してゆく海軍少尉・田中を柄本佑が演じており、バディムービーさながらの掛け合いを見せてくれる。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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