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『アリー/ スター誕生』

アカデミー賞確定?――見どころはレディ・ガガの演技力とブラッドリー・クーパーの歌唱力(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2018/12/04

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前置きが長くなってしまったが、本作『アリー/スター誕生』は『スタア誕生』の三度目のリメイク作品である。主演は日本でも高い人気を誇る歌手のレディ・ガガ、監督と共演はクリント・イーストウッド監督作品『アメリカン・スナイパー』(14)のブラッドリー・クーパーが務めている。ガガにとって本作は初主演映画、クーパーにとっては初監督映画である。
『アリー/スター誕生』は『スタア誕生』三度目のリメイク作品というよりも、ストライサンド主演版のストレートなリメイク作品と言ったほうがわかりやすい。メジャーなステージに上ることを夢見る歌手アリーが大物ミュージシャンのジャクソンと偶然出会い、人生が変わってゆくという物語で、大筋はこれまでの作品と同じである。

ストライサンド主演版と同様、本作の見せ場も歌唱シーンである。現代最高の歌姫の一人であるレディ・ガガのパフォーマンスに、ただただ圧倒される。ドラマ部分の演技も優れており、彼女は歌唱力だけでなく演技力も兼ね備えたアーティストであることを立派に証明してみせた。

意外だったのは、クーパーの歌唱力の高さだ。彼の演技力には定評があるが、ここまで歌えるとは思わなかった。実に魅力的な歌声であり、大物アーティストという設定に全く違和感はない。監督としての力量も極めて高く、初監督作品とは思えない堂々たる演出ぶりである。

当初、本作の企画はクリント・イーストウッド監督、某スター歌手主演を想定して動いていたが、紆余曲折の末、今回の形に落ち着いた。クーパーは『アメリカン・スナイパー』の撮影中にイーストウッドから薫陶を受けたと考えるのが自然であるし、彼の演出術から大いに学んだことだろう。次回作にも期待が高まる。

この原稿を入稿する直前に米国映画批評会議が選定するナショナル・ボード・オブ・レビュー賞が発表され、本作は監督賞、主演女優賞、助演男優賞(サム・エリオット)を受賞した。アカデミー賞をはじめ、本年度の映画賞レースを大いに賑わせるに違いない。
本作から“映画スター=レディ・ガガ”と、“スター・ディレクター(スター俳優兼監督)=ブラッドリー・クーパー”が誕生した。タイトルは“A STAR IS BORN”だが、この作品がもたらした結果は“STARS ARE BORN”である。

『アリー/ スター誕生』
監督:ブラッドリー・クーパー
出演:ブラッドリー・クーパー/レディ・ガガ/サム・エリオット
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式HP:http://starisborn.jp

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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