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『散り椿』

名キャメラマン・監督の映像美と独自の華麗な殺陣で魅せる時代劇(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2018/10/02

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岡田のこだわりは、殺陣。本作にはベテランの久世浩を筆頭に3人が殺陣師としてクレジットされているが、その3人目は岡田准一である。今まで見たことがない殺陣を見せたいという木村のリクエストに、岡田らが応えた結果である。開巻早々、雪の中で三人の刺客を相手にするシーン。中盤における西島秀俊との絡み。そして、ラストの大立ち回り。一瞬の斬り合いを見せる岡田の動きが見事だ。往年の時代劇スターは殺陣に独自の型を持っていたものだが、彼もまた独自の型を作り上げた。岡田オリジナルとも言えるダイナミックで華麗な殺陣である。

11月で38歳になる岡田准一は、14歳でジャニーズ事務所の6人組ユニット・V6の最年少メンバーに選ばれ、徐々に演技者としての頭角を現してきた。『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(03)で映画初主演。06年には是枝裕和監督作品『花よりもなお』に主演し、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞している。07~08年に放送され10年に映画化されたテレビドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』では、ハードなアクションをこなせる俳優であることを世に知らしめた。

初回から岡田の切れのいいアクションに度肝を抜かれたが、後に彼はフィリピン武術のカリと、あのブルース・リーが創始した截拳道(ジークンドー)のインストラクター認定を受けている。岡田准一は「肉体で完璧に語ることのできる俳優」を標榜する稀有な俳優なのである。

近年は『天地明察』(12)『図書館戦争』(13)『永遠の0』(13)『蜩ノ記』(14)『図書館戦争 THE LAST MISSION』(15)『エヴェレスト 神々の山嶺』(16)『海賊とよばれた男』(16)『追憶』(17)『関ケ原』(17)と年に一本以上のペースで主演映画が公開されており、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』(14)という特例を除き、テレビドラマにはほとんど出演していない。『駅 STATION』(81)『鉄道員(ぼっぽや)』(99)など、キャメラマンとして高倉健と多くのコンビ作がある木村は、岡田に「最後の映画スター」と言われた高倉健の後継者ともいうべき姿を見たに違いない。

静と動、いずれのシーンでも深みのある演技を見せてくれる岡田准一。彼を中心に、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子ら実力のある若手や中堅俳優陣と、奥田瑛二、石橋蓮司、富司純子らのベテラン勢が絶妙なアンサンブルを奏で、作品を支えている。日本映画の良き伝統を受け継ぐ、見応えのある作品である。

『散り椿』
監督・撮影:木村大作
出演:岡田准一/西島秀俊/黒木華/池松壮亮/麻生久美子/緒形直人/新井浩文/柳楽優弥/芳根京子/駿河太郎/渡辺大/石橋蓮司/富司純子/奥田瑛二
配給:東宝
公式サイト:http://chiritsubaki.jp/

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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