賃貸で同棲を始めたカップルが陥りやすい5つの落とし穴
橋本みゆき
2017/05/16
賃貸で同棲を始める際の注意点とは?
本来であれば胸が踊る同棲生活ですが、一歩間違えると大変なことになってしまうのをご存知ですか?
同じ部屋で長い時間を過ごすので、相手のイヤなところばかりが目に入ってしまったり、お金のことでトラブルになってしまったり、最悪の場合は別れてしまうことにも。
賃貸物件での同棲にはさまざまな注意点があります。
部屋を借りるときの初期費用や契約にまつわる問題に始まり、もしも険悪なムードになってしまったときの居場所をどう確保するかといった間取りの問題や、生活費の分担の問題まで、思わぬ落とし穴とその対処法をご紹介していきましょう。
<1>間取り次第でふたりの仲が険悪に!?
「大好きな相手と一緒に暮らすのだから、四六時中、一緒にいられるように、ワンルームか1Kにしよう!」
そんな風に考えているカップルは少なくないことでしょう。
でも、その発想は絶対に止めてください。ある統計によれば、ワンルームや1Kで同棲をしたカップルの8割近くが、結婚までたどり着かずに破局するという結果も出ているほどです。
「なんで狭い間取りはいけないの?」と思うかもしれませんが、よく考えてみてください。同棲をスタートさせることで、デートだけでは見抜けなかった、たくさんの要素が浮き彫りになります。
限られた時間のデートでは、見過ごすことができていたパートナーの癖も、目の前で毎日繰り返されるのだと考えると…?
いびきに歯ぎしり…、独り言もうるさい…。
そういえば、部屋も汚いし…、気分屋ですぐ機嫌が悪くなる…など、色々と思い当たる節はありませんか? その上、残業や飲み会で、パートナーの帰宅時間が遅くなるたびに物音で起こされる…などの生活スタイルの違いも出てきます。
これらがストレスとして爆発するのは、時間の問題です。イライラやストレスを解消させるためにも、各自の部屋を持ち、プライベートな空間を保てるようにしておくことが重要になります。そのため、間取りとしては、2DK以上がおすすめです。
不動産会社に勤務していた頃、カップルのお客さまにこのようなアドバイスをすると、「デザイナーズマンションなどの広い空間を、パーテーションでふたつの部屋に区切ればいい」と言われる方もいらっしゃっいました。
ですが、正直に申し上げると、それはあまり意味がないと言えます。
パーテーションで区切ったとはいえ、本来の部屋のような独立性はありません。結局は空間としてつながっているため、お互いの存在を感じてしまうからです。
追い込まれたとき、ひとりになりたいときに、完全に隔離される空間があることが、ストレスを溜め込まないために必要と言えるでしょう。
<2>まとまった初期費用が必要
イメージ/©︎jhk2303・123RF
2DK以上の広い部屋ともなれば、気になるのが初期費用です。賃貸物件に入居するためには、たくさんの費用が発生します。この大きさのお部屋の場合、初期費用の大体の目安となるのは、賃料の約半年分です。
では、実際に家賃8万5000円の物件で見てみましょう。
(初期費用の主な内訳)
・敷金(賃料の1カ月分): 8万5000円
・礼金(賃料の1カ月分): 8万5000円
・仲介手数料(賃料の1カ月分+消費税): 9万1800円
・前払家賃(最大2カ月分): 17万円
・火災保険料:2万5000円
・賃貸保証料(賃料の30~80%):約4万円
・鍵交換料:約2万円
合計金額は約52万円です。やはり賃料の約6カ月分がかかってきます。
そんなにかかるの? と思う方も少なくないでしょう。
ですが、ほかにも「ハウスクリーニング費用(消毒費用)」や「事務手数料」が発生する物件もあります。また、引越し費用や家具の買い替え費用などもかかってきます。ある程度、まとまった金額が必要になるという意識を持っておきましょう。
<3>生活費の負担でトラブルも…
入居後、ふたりにとって重要になってくるのが、やはり生活費です。先程と同じように家賃8万5000円の物件を例に見ていきましょう。
(生活費の主な内訳)
・賃料:8万5000円
・電気・ガス・水道代:1万5000円
・食費:3万円~
・電話代:2人で1万5000円
・インターネット代:5000円
・外食・交際費:3万円~
・日用品・雑費:2万円
合計金額は20万円です。ですが、夏や冬になると、エアコンをつけっぱなしにする時期には、電気代はさらに膨らみます。自炊をあまりしないカップルであれば、食費も跳ね上がります。
また、生活費の負担のしかたですが、均等に折半するケースもあれば、収入によって彼氏(または彼女)が多く負担するケースも出てきます。
たとえば正社員の彼氏と、アルバイト勤務の彼女であれば、家賃は彼氏が、水道光熱費と食費は彼女が…という負担のしかたも多くなります。ただ、この場合は、彼女が頑張って自炊をすることで、出費を抑えてやりくりできるといったメリットが少なからずあるでしょう。
「どちらがいくら負担をするのか?」
一緒に住み続ける限り、お互いが生活費を出し合っていくのが当然ですから、お互いに納得できるラインで線引きをしておくことが大切と言えるでしょう。
お金の問題は先延ばしにはせず、真っ先に解決しておきましょう。
<4>入居審査の厳しさと保証人問題
「ふたりで住むのだから、収入も2倍。だから入居審査なんて余裕!」と思っていませんか?
実は、同棲カップルの賃貸契約の審査は通りづらいと言われています。なぜなら、基本的に賃貸契約はどちらかひとりの名義(彼氏名義または彼女名義)で行なうからです。
実際には、ふたりで50~60万円ほどの収入があっても、契約者の年収を基準に審査をします。そのため、一般の契約でむずかしい場合に提案されるのが「連名契約」です。どちらかだけを契約者にするのではなく、入居者全員を契約者とする賃貸契約になります。
「じゃあ、その連名契約にしよう!」と、簡単に決めてはいけません。
あまり考えたくないことですが、仮に破局を迎えてしまった場合でも、どちらかの名前を借り主欄から外すことができなくなります。そうなってしまえば、自分は別の場所に住んでいるのに、家賃支払い発生の義務があり、退去時には原状回復義務なども発生してきてしまうのです。
また、賃貸契約の保証人問題もあります。どちらかが契約者の場合には、契約者の親族を保証人とするのが一般的です。仮にですが、「契約者は彼氏、保証人は彼女の父」としてしまえば、先程と同じように、破局後に大きな問題が発生してきます。その上、連名契約だった場合、それぞれの契約者に保証人をつける必要があるのです。
しっかりと契約内容を理解すると同時に、いざという時のことを考えて、賃貸契約に踏み切ることをおすすめします。
余談ですが、以前よりは、ルームシェアや同棲に対してのイメージはずいぶん寛容になっています。しかし、やはり年配の大家さんのなかには、同棲に難色を示す方も少なくありません。「結婚前に同棲なんて…」そんな古い考えを持っている方は、以前に比べれば少なくなりましたが、まだまだいらっしゃいます。
さらに生活騒音や、片方が引越しをした場合の後々の支払いはどうなるのか? という不安材料の多さから、同棲カップルの入居に難色を示される大家さんも少なくはないのが現実です。
ちなみに、どちらかひとりが暮らしている賃貸の部屋で、途中から同棲するケースもあるかと思います。その場合、必ず管理会社や大家さんに同棲について伝えるようにしてください。
物件によっては、入居者はひとりと決められているものもあります。
また、同居が可能な物件であっても、通常、契約時には同居人の有無を確認します。
賃貸契約書を見れば、契約途中で同居人の有無に変更があった場合などは管理会社へ報告しなければならない旨が書かれているはずです。
もし、無断で同棲を始めてしまって管理会社や大家さんに見つかった場合、契約違反で退去を求められるかもしれません。
<5>破局して退去することになったら?
残念ながら、破局することになってしまった場合、問題になってくるのが、退去や引越しにかかる費用です。
本当は出ていきたいのにお金がなければ、別れた後も一定期間、生活を共にしなければいけません。破局理由が相手の浮気だったなど、顔も見たくない状況であっても、一緒に住み続けなければならないのは大きな苦痛でしょう。
また、どちらかが出て行った後、ひとりで高額な家賃を払い続ける負担も無視できません。入居する際に、初期費用で貯金を全額使い切ってしまうと、こういった万が一の際、お互いの首が締まってしまいます。
そのため、どんなに気に入った物件があっても、余裕を持って家賃を支払えるのか、いざというときにも対応できるのか、という視点が大切になってきます。
同棲するならここに要注意(まとめ)
最後に、賃貸物件で同棲生活を始めるときの注意点をまとめておきますので参考にしてください。
(1)間取りは2DK以上!
どんなに一緒にいたくても、ひとりになれる空間を確保する
(2)初期費用は家賃の約6カ月分!
想像している以上に、まとまった金額が必要になります
(3)生活費は収入に合わせて負担!
お互いに不満・負担のない範囲で線引きを
(4)入居審査は簡単にはいかない!
連名契約を行なう場合には、デメリットもしっかり理解する
(5)退去費用はお互いに準備!
破局という、万が一の事態に備えた貯蓄をしておく
賃貸物件で同棲をする場合には、ここでお伝えした注意点に留意していただくほか、賃貸契約上のルールを守って、楽しい同棲生活を送っていただければと思います。
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この記事を書いた人
住宅ライター・ファイナンシャルプランナー
銀行員、不動産会社、OL、新聞社、広告代理店を経てライターに。宅建やファイナンシャルプランナー、証券外務員、色彩検定などの資格を取得。住宅の選び方からインテリアまで幅広く執筆中。