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事故物件公示サイト運営者、大島てる氏に聞く(2)

【大島てる】事故物件はすべて晒す。気にするかしないかはあなた次第です(2/3ページ)

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大家に嘘をつかれたら、不動産会社はどうしようもない


写真はイメージです

——不動産業者が事故物件と知らずに客付けしてしまうことがあり得るのですね?

大島:そうです。大家と不動産業者の関係は、大家が客付けを依頼するところから始まります。うちの物件に1部屋空きが出たから入居者を探してくれないかという具合に依頼をするわけです。この時点で、その物件が事故物件かどうか、普通は不動産業者が把握しているはずがありません。いくら地場の不動産業者といっても、取引のプロに過ぎず、情報に関してはズブの素人ですから、知らなくて当然なのです。

ですが、いざ何かトラブルが起きたときにクレームを突きつけられるのは不動産業者です。そこで、不動産業者が大家との間で念書を交わすことがあるのです。これから入居希望者を集めるけれども、告知義務があるから本当のことを教えてください、過去に入居者の自殺などないですよね? などと大家に確認を取るわけです。

もちろん、ここで大家が嘘をつく場合がありますし、実際に嘘をつかれてしまったらもうどうしようもない。でも、こうして念書を交わしておくことで、いざ問題が起きたときに不動産業者は保身ができる、「私たちも騙されたのだ」と言えるわけです。目的は保身なのですが、何も知らされないまま事故物件に住んでしまう人が出てしまうことを防ぐ上では一定の機能を果たしているといえます。

事故物件の告知義務はすべてが「あいまい」

——事故物件の告知義務について説明していただけますか?

大島:事故物件の告知義務についていえば、宅建業法には具体的なことは何も書いてありません。それこそ、「大事なことは告知しなさい」というレベルです。

事故物件とは心理的瑕疵がある物件、平たく言えばそこに住むことに心理的な抵抗がある物件のうち、殺人や自殺といった理由で人が亡くなっている物件のことです。心理的瑕疵としては、ほかには隣に暴力団の事務所や風俗店があるといったものも該当します。包含関係でいえば、「心理的瑕疵物件」という大きな括りのなかに「事故物件」が一部としてあるという位置づけですが、宅建業法には「心理的瑕疵」という語さえも登場しないのです。

当然、たとえば自殺があった場合は何年間は告知しなさいとか、何人目までの入居者には告知しなさい、といったことも法令上は一切書かれていません。では、何を拠り所にしているかといえば、裁判例です。ひとつひとつの紛争事例ごとに裁判所が判断しているのですが、その裁判所の判断を踏まえて、これは告知したほうがいいとか、これは告知しなくても大丈夫だろうとか、不動産業者が判断しているというのが現状なのです。

——明文化されたルールはないのですね?

大島:本当にケースバイケースです。ただ、なかにははっきりしていることもあって、たとえばマンションなど集合住宅の場合、実際に人が亡くなった部屋の隣の部屋や上下の部屋については裁判所は心理的瑕疵を認めてくれていません。

また賃貸物件の場合は、事故後、ひとり目の入居者には告知するけれども、ふたり目には告知しなくてもいい、というのが業界の潮流になっています。これは、過去にそういう裁判例があるのですが、私見では、ひとり目に告知すればそれで十分などとはまったく考えられませんし、ひとり目の入居期間が短かかったり、事故の影響が大きかったりすれば、当然、裁判になったときに「もうふたり目だから」というだけでは通用しない可能性は十分にあると考えています。

ですが、少なくともひとり目には告知しなければまずいというコンセンサスが業界にできつつあること自体は、かつてに比べれば進歩したといえるのは間違いありません。

もちろん、なかにはそうしたコンセンサスがあることを知りながら、ひとり目に対してさえ事故物件であることを告知せずにすませてしまおうとする不動産業者もいます。また、たとえば知り合いや社員を、ひとり目としてごく短期間だけ入居させて、お客さんにはもう告知義務はないからと開き直るケースもあります。

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