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不動産取引をめぐる見えないお金の流れ(9)

賃貸物件オーナーも不動産会社にカモにされている(2/2ページ)

大友健右大友健右

2016/02/15

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フリーレント分の賃料をかすめ取るケースも

ただ、見落としてはならないのは、ADというのは脱法行為であり、本来なら支払わなくてもいいお金をオーナーは払わされているということです。

「ウチは幸いなことに、ADを払っていない」というオーナーさんの話を聞いたことがありますが、借り主を見つけるために「礼金ゼロ」という条件を飲まされるケースもあるので油断はできません。

この場合の「礼金ゼロ」は、いわゆる「礼金ゼロ物件」とは違います。借り主が支払った礼金を、オーナーではなく不動産会社が受け取ることでADを支払ったのと同じ利益を不動産会社が得ているのです。

最近では「フリーレント」といって、1~3カ月程度の家賃を無料にする契約形態が出現していますが、悪質なケースだと借り主がフリーレントの事実に気づいていない場合、フリーレントなしの通常契約にして、浮いたフリーレント分を不動産会社がかすめ取る場合もあります。

信じられないかもしれませんが、不動産業界にはこのように「自社の利益」を何が何でも確保するという確固たるカルチャーがあり、「家を貸したい」という貸し主は取引のなかで圧倒的に不利な立場におかれているのです。

オーナーがカモにされない、ただひとつの方法

最後に「余計なADを払いたくない!」と考えているオーナーさんにアドバイスを差し上げましょう。

それは、複数の不動産会社や募集チャネルを活用して、自物件の競争力を高めること。これに尽きます。

不動産物件を売買する場合、不動産会社はオーナーと媒介契約を交わすことが義務づけられていて、「専任媒介」ではなく「一般媒介」という形をとると、売り主であるオーナーは複数の不動産会社へ売却依頼をすることができます。

ところが賃貸の場合、売買のケースと違って媒介契約の締結が義務づけられていません。したがって、1社の不動産会社としかつきあいのないオーナーは、その会社に囲い込まれるか、多額な手数料を払わされるカモになるリスクを背負っているといってもいいでしょう。

そうならないためには、オーナー自らが働きかけて、有利な取引を選択できる余地を確保するのです。「業者まかせ」ではなく、「業者をうまく使う」ことが賢いオーナーになるいちばんの近道です。

今回の結論
●不動産取引のステージにおいて、貸し主は圧倒的に不利な立場におかれている。
●宅建業法で不動産会社が受け取ることのできる報酬額は「家賃の1カ月分以下」と定められているが、「AD(広告料)」というすり抜け策がある。
●不動産会社のカモにならないためには、複数の不動産会社や募集チャネルを活用して、自物件の競争力を高めること。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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