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思わずガッツポーズしたくなるお客さんとは?

部屋探しの際、知っておきたい 不動産営業マンの笑顔の裏にある3つのホンネと理想の物件の探し方

大友健右大友健右

2017/04/06

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イメージ/©︎poko42・123RF

営業マンにとって、ありがたいお客さんとは?

賃貸物件を扱う不動産会社の営業マンは、よくこんなことを言います。

 「春先に、新大学生のお子さんの部屋を探している人が来ると、ガッツポーズが出そうになりますよ」 

一体、どういうことなのでしょうか?

毎年春になると、首都圏の大学に進学する子どもの部屋を探すため、地方からやってくるお客さんが一定数います。たいていの場合、お子さんと一緒にホテルや旅館に1〜2日ほど宿泊して、その間にあれこれ手続きなどをするわけですが、そういうお客さんが部屋探しにかけられる時間は、1日からせいぜい1日半程度しかありません。

そのため、なかなか何軒もの不動産会社を回ったり、物件にいろいろ条件をつけてじっくり探したりすることはできません。

もちろん、あらかじめポータルサイトなどで物件を選んでから来店するお客さんもいますが、春先は賃貸業界の繁忙期ですから、人気の物件はどんどん契約が決まってしまいます。そのため、営業マンが紹介した物件のなかから1、2件の内見をしただけで申し込み、というパターンがほとんどと言っていいでしょう。

実は、こういった「その日のうちに決めてくれるお客さん」は、不動産会社の営業マンにとっては、とてもありがたい、いいお客さんなのです。

<ホンネ1>営業マンは、その日のうちに契約を取ろうと考えている

ここでちょっと不動産会社の営業マンの笑顔の裏側をのぞいてみましょう。

営業マンは、基本的に「その日のうちに契約を取る」ことを考えています。お客さんは気が変わりやすいことを知っていますし、ほかの不動産会社に行かれたくないと考えているからです。

どこの不動産会社に行っても、基本的に扱っている物件の多くは同じです。なかには専任物件といって、その会社でしか入居者募集(客付け)をしていない物件もありますが、ほとんどが同じ物件を扱っているのであれば、ほかの不動産会社に行かれてしまう前に契約を取ってしまおうと考えるのも理解できるでしょう。

また、自分の営業成績のためという理由もあります。不動産営業マンの多くは歩合給で働いていますから、月末近くには何としても「今日中に契約を1件取りたい」という気持ちになる営業マンも少なくないはずです。

これは実際にあったケースなのですが、入居希望者が2月1日からの契約を希望しているのに、何とか契約日を1月中にしたい営業マンが、「翌月の契約になると家賃が3000円プラスになります」と言って強引に1月31日付けで契約をまとめてしまったそうです。

そのほかにも、「いまの時期は、これしか部屋がないんです」とか、「早く決めないと、ほかの人に取られちゃいますよ」というトークで、お客さんの不安や焦りを煽って契約をうながすのは、その日のうちに契約を決めてしまいたいという心理が働いていると言えるでしょう。

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<ホンネ2>営業マンには優先して契約を取りたい物件がある

もうひとつ、営業マンのホンネとして知っておいていただきたいのは、営業マンには優先的に契約を取りたい物件があるということです。

たとえば、入居者が決まりそうになっていたのに契約の一歩手前でキャンセルされてしまったなど、大家さんとの関係から早く契約を決めたい物件もあるでしょうが、やはり営業マンが契約を決めたいと考えるのは、より多くのお金が入ってくる物件です。

賃貸物件の契約が成立すると、不動産会社には仲介手数料が入ります。この仲介手数料は、宅建業法で「家賃1カ月分」という上限が決められています。

仲介手数料を支払うのは大家さんと借り主ですが、大家さんと借り主が支払う仲介手数料の合計が、「家賃1カ月分」を超えてはいけないというルールがあるのです。

ですから、借り主(大家さん)が家賃1カ月分の仲介手数料を払えば、大家さん(借り主)が手数料を支払う必要はありませんし、借り主が家賃0.5カ月分を支払ったら、大家さんから受け取る手数料の上限は0.5カ月分になります。

となると、より多くのお金が入ってくる物件というのは、家賃の高い物件ということになりますが、それだけではありません。

実は、賃貸物件の契約時には、AD(広告料)という名目で仲介手数料の上限を超えるお金が大家さんから不動産会社に支払われているケースが多いのです(図1)。

 
(図1)賃貸借契約における仲介手数料、ADの流れ

ADがつかない物件の契約を取っても、不動産会社に入ってくるお金は家賃1カ月分ですが、ADがつく物件の契約が取れれば、不動産会社には家賃2カ月分とか3カ月分のお金が入ることになります。

その結果として、営業マンが「お客さんにとってのいい部屋」ではなく、「ADがついている儲かる物件」を積極的にすすめてしまう場合も少なからずあるのです。

<ホンネ3>改めて、なぜ子どもの部屋を探すお客さんが喜ばれるのか

ここまでお話ししたことで、冒頭で申し上げた子どもの部屋探しのために地方から出てきたお客さんは、営業マンにとってどれだけ「いいお客さん」なのかがご理解いただけるのではないでしょうか。

そうしたお客さんは、土地勘も時間もないので、本当のおすすめの物件は見せずに、「いまの時期はこれしか物件がないんです」と自分たちにとって都合のいい物件をいくつか紹介すれば、その日のうちにそのなかから物件を選んで契約を申し込んでくれるわけですから…。

もちろん、そのような「いいお客さん」に限らず、営業マンにとっては、儲かる物件をいかに契約してもらうかが腕の見せどころです。

先ほどもお話ししたように、「ほかの人に取られちゃいますよ」とか「こんなにいい物件はもう出てきませんよ」などとお客さんの不安を煽るのは当たり前で、「みせ物・ボロ物・決め物」などとも言いますが、物件の内見をするとき、最初の1件は手が届かない豪華な物件、もう1件はわざとダメ物件を見せてがっかりさせておいて、最後に本命物件を見せて契約を取るというテクニックも使います。

また、すでに契約済みの物件をポータルサイトに掲載したままにしておいて、問い合わせてきたお客さんに別の物件を紹介する「おとり物件」もよく使われています。

次ページ ▶︎ | 理想の部屋を見つけるためにはどうしたらいい?

理想の部屋を見つけるためにはどうしたらいい?

営業マンが何を考えて、何を狙っているのか、その腹のなかについてはおわかりいただけたかと思います。では、そんな営業マンの思惑に踊らされず、理想の部屋を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?

まずは、信頼できる不動産会社と営業マンを選ぶことです。

かつての不動産会社では、賃貸物件の募集図面を店頭で見せられて物件選びをするスタイルが主流でした。ですが、最近では、パソコンで不動産会社しか見られない賃貸物件のデータベースを検索しながら、お客さんと一緒に物件を探すスタイルが増えてきています。そのためか、仲介手数料の情報などを隠さずに、積極的に情報を提供する不動産会社も少しずつ出てきているようです。 

もしも、そうしたスタイルの不動産会社で、隠しごとをせずに、根気強く物件探しにつきあってくれる営業マンと巡り合えたら、理想の物件に出会える可能性はぐっと高まるのではないでしょうか。

ですから、「理想の部屋を見つけたい」という人は、時間の許す限り複数の不動産会社を訪ねて、信頼できる営業マンを探してみることをおすすめします。

非公開物件が眠っていることも

複数の不動産会社を回るメリットは、ほかにもあります。

ひとつはレアケースですが、空室が出たばかりで、まだ情報を公開していない物件が運よく見つかることがあるからです。

また、大家さんは客付けしてもらうために、不動産会社と媒介契約を結びます。なかには専任物件といって、1社だけに客付けを依頼する場合があるのです。専任物件は、ほかの不動産会社が客付けすることはできませんし、専任物件の情報は、その会社に行かないと知ることができません。

ですから、複数の不動産会社をまわってみると、専任物件のなかに思わぬお宝物件が眠っているかもしれません。

余談ですが、戸建ての賃貸物件のなかには、マンションなどと比べて割安の物件が多くあります。なぜかというと、戸建ての賃貸物件はそもそも数が少ないため、戸建ての賃貸物件を探しているという人は多くありません。そのため、営業マンもあまり積極的に扱おうとはせず、大家さんとしても家賃を割安にせざるを得ないところがあるのです。

そう考えると、戸建ての賃貸物件を狙ってみるのも手かもしれませんね。

不動産会社の営業マンが、笑顔の裏側で何を考えているのか、おわかりいただけたでしょうか?

理想の物件を見つけるためには、タイミングの良さや運も必要ですが、やはり、いろいろな情報を教えてくれながら、根気強く部屋探しにつきあってくれる営業マンを見つけることが大切と言えるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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