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「申込金」と「手付金」の違いはわかりますか?――文書の確認をしないで起こるトラブル

大谷 昭二大谷 昭二

2021/03/24

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不動産の売買や賃貸契約などで使われる言葉には専門用語も多く、一般の人には分からないもの、勘違いしてしまうものもあります。しかし、そんな意味が分からず、その結果として思わぬ出費につながったりすることもあります。

そんな間違いやすいものを解説していきます。

 

「申込金」と「手付金」――その違いはわかっていますか?

Q.賃貸住宅の申し込みを不動産ではなく、直接、家主に行い「申込金」を支払いました。しかし、これをキャンセルしたところ、「申込金」が返金されません。どのように対応したらよいですか。

A.「申込金」と「手付金」は、住宅の売買や賃貸契約をする際に、しばしば出てくる言葉ですが、この2つはまったくの別物なのです。

一方、「手付金」を受け取れるのは、契約の当事者である家主だけ。あるいは、仲介業者が受け取る場合には、家主からの代理権が必要になるので、家主から手付金の受領を認めるという委任状などが必要で、契約の際には委任状を提示する必要があるとされています。

申込金は正確には「申込証拠金」というもので、その物件を売買、あるいは借りる際に、申し込みの意思を確認するためのお金です。これを支払っておくことでほかにその物件をほしい人、あるいは借りたい人が現れても優先権を得るためのお金なのです。そのため契約の前であれば、購入の中止や物件を借りるのをキャンセル、「申し込みを撤回」することはでき、その際に、申込金も返金されます。

一方、「手付金」は契約をしたあとにし売買契約、あるいは賃貸契約を結ぶときに支払うお金です。つまり、契約のキャンセルになるため、支払った手付金は「解約手付金」になるため返金されません。

そのためお金を支払う前にそのお金が「申込金」なのか、「手付金」なのかを明確に確認しておく必要があります。

 

仲介業者と管理業者、どっちが正しいのか

そこで今回のご質問に対するお答えは、家主に直接支払ったのは「申込金」ですから、家主であろうと仲介業者であろうと、申し込みを解除するわけですから、全額返還されるべきものです。

「申込金」であるのに返金されない場合は、仲介業者であれば行政の監督窓口からの指導によれば、すぐに従う可能性があるので、こうした窓口への相談が有効です。しかし、家主の場合には、「監督窓口」そのものが存在しないために強制力がないため、返金されることが難しくなります。

このような家主が素直に返金に応じない場合は、少額訴訟などの法的手続きによらなければ返金に応じない可能性があります。

しかし、少額訴訟の費用と手間を考えると、少額訴訟すること自体、費用倒れに終わる可能性もあります。

ただし、家主に申込金を支払っていた場合でも、仲介業者などからその物件を紹介された場合は、仲介業者に責任を求めることが可能だと思いますので、仲介業者に相談、あるいは交渉をするのも1つの方法です。

Q.仲介業者の契約書の内容と、管理会社から送られてきた契約書の内容が異なります。どちらが正しいのでしょうか。

 

A.こうしたトラブルもあるようです。こうしたことが起きる原因は、本来、仲介業者は管理会社が指定する契約書を使用すべきところを、自社で使用している契約書を間違って使用したことによるものと想像されます。

こう考えると、正しい契約書は管理会社が用意したものとなります。そのため管理会社の契約書に従うことになります。

とはいえ、契約にあたっては仲介業者が示した契約書の内容に納得して契約したわけですから、その内容が大幅に異なり、それに納得できない場合は解約、場合に仲介業者に対して、損害賠償を行うことが可能となります。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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