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同じ物件での部屋の移動 定期借家契約の解約――家主から出された条件は?(2/3ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2020/08/27

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定期借家契約ーー病気での途中退去はできますか?

Q.定期借家契約でワンルームマンションを借りていたが、病気で急きょ、長期入院することになってしまいました。家主に契約解除を申し出たところ、「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言われました。この支払いに応じなくてはいけないのでしょうか?

A.「病気療養」は、借主が解約する条件として認められています。また、ワンルームマンションということでから、普通に考えても「200平方メートル未満」のはずですので、問題なく解約することができます。家主に、借地借家法の規定を説明し、了解を得るように説得してください。

自宅を新築――定期借家契約で借りていた戸建ての賃貸は解約できますか?

Q.定期借家契約で一戸建ての借家を借りていたが、このたび自宅を新築。家主に契約解除を申し出ると、「定期借家契約なので途中解約はできない。どうしてもというのなら、契約期間終了までの家賃を支払ってから退去してくれ」と言われてしまった。家主の主張は横暴だと思うのだけれど、支払いに応じなくてはいけないのですか?

A.借地借家法第38条第5項では、次のように規定しています。

住の用に供する建物の賃貸借[床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。]において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。

借家が床面積が200平方メートル未満の建物であれば、考慮すべきは「自宅の新築」が、法に規定されている「その他のやむを得ない事情」に相当するかどうかという点です。この「その他のやむを得ない事情」とは「転勤、療養、親族の介護」などと同等の内容でなければなりませんが、「転勤等」は、借主が自分の都合で決めることができないものという点が共通しています。

つまり、借主が自分の都合以外で借りている物件に住み続けることが不可能になった場合に、借主の解約件を認めなければ、借主は非常に不利な状況に追い込まれてしまうのです。そこで、法は、こういう場合に限って、定期借家契約といえども、借主の解約を認めることにしたのです。

そこでこのご相談の「自宅の新築」は、借主の都合で行うことにほかなりませんので、「やむを得ない事情」に該当するとは言えません。したがって、借主の解約は認められず、定期借家契約を終了させることはできません。

対応としては、家主との交渉次第で、一定の違約金の支払いを持ちかけて、特別に解約を認めてもらえるように交渉するという方法を検討してみてください。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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