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礼金は誰へのお礼? 敷金と保証金の違いは? キャンセルしたときに手付金は戻ってくるの?

大谷昭二

2020/06/29

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イメージ/©︎TAKASHI OGAWA・123RF

前回は賃貸住宅を借りる際の契約書の内容、実際に契約が履行されるタイミング、契約金を支払い後のカギの受け渡しについての解説を行いました。

今回は借りる側にとっては、永遠の疑問とも言える「礼金」「敷金」「保証金」「手付金」について解説をしていきたいと思います。これら「○○金」は、何となく物件を借りる際の“決まりごと”なので支払っているという方も多いでしょう。そんな思いに答えていきます。

「礼金」は誰へのお礼? 支払わないでも大丈夫なのか?

Q.賃貸住宅を借りる際の「礼金」というのは何に対するお礼なのですか?

A.じつは「礼金」というのは、法律上、特に規定のないお金です。礼金のやり取りは、単なる慣習に過ぎません。ただ問題は、家主が礼金の支払いを求め、借主がそれを拒否した場合に家主が契約を拒否するだろうということです。借主に物件を選ぶ自由があるのに対して、家主にも誰に部屋を貸すか、誰と契約するかの自由があるのです。

従って、「礼金が高額なので支払いたくない」と言って、家主が認めてくれなければ契約できないだけなのです。契約そのものを強制することはできません。言い換えれば、「貸してもらってありがとう」という“お礼”ととらえることができるでしょう。借りる側にとってみれば「借りてやってる」という思いもあるかもしれません。しかし、いったん家を貸してしまうと、日本の法律では簡単に追い出すことはできません。そこでその人を見極める1つの方法と言えるでしょう。

敷金と保証金の違いは何か? 保証金に敷金が含まれることもある?

Q.「敷金」と「保証金」には、どのような違いがあるのでしょうか?

A.いまは「敷金」と「保証金」は、実態としては、ほとんど同じような意味で使われていることが多くなっています。しかし、厳密に言うと、次のような違いがあるとされています。

1)敷金は個人の住居の契約、保証金は事務所、店舗やテナントなどの主に法人契約によく使われています。

2)保証金は約定によって、退去時に敷引き(解約引き、償却などと呼ぶ場合もある)があることが多いのに対して、敷金は通常敷引きがなく、実費精算になります。

3)敷金は、民法第316条,第619条などに規定のあるお金ですが、保証金は法律上規定のないお金になります。ただし、判例では敷引きのない保証金ですが、実情としては敷金と同じ扱いとなっているようです。

4)保証金は、約定がないと権利の承継がありません(次の家主に引き継がれない)が、敷金は原則として新しい家主にも引き継がれます。

5)保証金=敷金+礼金という解釈もあります。つまり、保証金方式をとっている場合には、同時に、敷引きなどがある代わりに礼金を取ることがなく、敷金方式をとっている場合には敷引きがない代わりに礼金を取る地域が多いということです。

(参考)【改正後】民法第622条の2(敷金)

1 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければ
ならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、
賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

キャンセルしても手付金を戻せる? 戻せない? 戻す方法は?

Q.不動産が夫者など仲介業者に手付金として支払ったのですが、キャンセルしても返金されないのでしょうか?

A.本来、手付金として受け取ることができるのは、契約の当事者である家主だけです。仲介業者が便宜的に受け取る場合には家主からの代理権が必要であり、家主から、手付金の受領を認めるという委任状などを提示する必要があるとされています。

ですから、仲介業者が家主の代理権を証明するものを提示すれば手付金として受領することができるので、手付金支払い後にキャンセルする場合には、解約手付金扱いとなり手付金の返金は不可能になっても異議はいえません。

ところが、よくあるケースとして実際には代理権を得ずに手付金を受け取っているというものです。以前は、仲介業者が代理権なしに便宜的に手付金を受け取ることも慣習として黙認されることも多かったのですが、最近は厳密に解釈するようになってきています。

一方、賃貸借契約そのものは、手付金の授受によって成立するという考え方もあります。具体的には、仲介業者が預かった手付金を家主の元に届け、それを受けて家主も契約書を発送した(契約の着手と考えられます)あとでは手付金は、解約手付金として扱われてもおかしくありません。

つまり、仲介業者が預かってから一定の期間が経過してしまうと、解約手付金として処理されても仕方がないと思います。この「一定の期間」は、通常1週間ぐらいになります。

逆に、仲介業者に手付金として支払った場合でも、正式の代理権がなかったとき(支払い時に代理権を証明するものを提示されなかったとき)で、支払い直後のキャンセルであれば、返金に応じるべきであると解釈されるようになってきています。

とはいえ、手付金として支払う際は、「キャンセルしたら返金されない」ということを覚悟して支払うべきでしょう。なぜなら、手付金を支払えば、借主だけでなく家主に対しても強い拘束力があるからです。安易に、「仮押さえ」するつもりで手付金を支払うのではなく、迷っているのであればそのことを仲介業者に伝え猶予をもらうようにすることで無用なトラブルをさけることができるはずです。

契約書に更新時の値上げについて項目が……削除を求めたほうがよい?

Q.契約書の内容を見ると、「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という一文がありました。こうした契約書は問題はなのでしょうか?

A.「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という合理的な根拠はあるのでしょうか?万が一、そういう根拠があれば、「不当な契約」とは言えません。しかし、一般的には「更新ごとの自動値上げ」を行うような合理的な根拠はないと思います。

こうした契約は消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」に該当しますので、契約内容そのものが無効となります。できれば、最初から削除してもらうほうがよいですが、あまり強い交渉を行うと契約そのものができなくなる(家主が契約を拒否する)可能性もあります。

入居を優先したいのであれば、あまりに強い要求は避けたほうが無難でしょう。その代わり、契約更新時には交渉を行う必要があります。どちらがよいとは一概に言えませんが、前に交渉するか、あとに交渉するか。また、家主の姿勢を知る材料にもなるでしょう。いずれにしても、最終的にはご自分でどうするかを明確にすべきでしょう。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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