ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

老後、あなたの住む家はあるか?

高齢者住宅難民問題待ったなし(2/2ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

――高齢者の住まいを考えるうえで家主と不動産会社のあいだに意識の乖離があるのも現実問題としてあります。

(不動産)管理会社からすると高齢者は遠慮したい、家主からすると家賃が入るのなら入居を受け入れたいという意識の差があるのは事実です。ただ、家主は入居後のトラブルを明確に想像できていない可能性もあります。管理会社は常に現場で対応しているため孤独死などを含め高齢者の居住対応の困難さを理解しています。些細なことかもしれませんが、「電気がつかない」「テレビがつかない」「リモコンがない」など、若い人であればなんてことはないことでも高齢者にはできないというケースもある。家主は、「管理会社が責任持ってくれるなら入居を受け入れる」というのではなく、みずから現状を把握し責任を持つことで(管理会社と一緒に)高齢者を受け入れる環境を作り上げることが必要となってきます。

――解決策を見出すのは難しい。

確かに解決策を見出すのはすごく難しいです。だからこそ、そこに関わる人たちの意識のあり方がまさに問われているのです。昨今感じるのが、家主業が不動産投資に変わってきているということ。昔の家主は入居者との繋がりがもっとあった。しかしながら現状の家主業は、不動産投資というお金の部分だけにフォーカスし、あとは管理会社に丸投げ。入居者を知らない家主が多くなっているのが現状です。家主は入居者に生活の場を提供している自覚をもっと持つべきではないでしょうか。

――それぞれの立場で意識を変えていかないといけないですね。

管理業務はどんどんアウトソーシングされてきています。家賃保証は保証会社、24時間駆け付けサービスなどのコールセンター、そして重要事項説明もIT化されてきています。自動化やアウトソースできるところは外部に任せて、逆に人にしかできない部分に注力する。すなわちそれは入居者とのコミュニケーションです。何もこれは賃貸業界だけのことではありません。例えば飲食店でロボットが、味が一定のご飯を作るとします。それを運ぶのがロボットでは味気ないですが、人が「お待たせしました」と笑顔で運べばあたたかさがありますよね。

いずれにしても家主としてラクして稼げるというのはこれからの時代では難しいでしょう。生活の場を提供するのであれば、入居者の生活に関わることを知っておく必要があるからです。国が行っている現状の仕組みでは、高齢者には貸したくないと思う家主がいるのもある意味仕方がないとも思います。そのなかで、貸す側も借りる側も自立し、現場の声を上げていく。そしてその声を拾って国も変わらなくてはいけない。

――自分の身は自分で守るという意識を持たなければなりませんね。

そうです。日本人にはもっと自立が必要。誰かがなんとかしてくれる時代は終わったのです。住宅は生きる基盤であり、必要不可欠なもの。今までの高齢者は家族に養われ、年金をお小遣いとして生活することができました。これからは子どもを頼れない時代になるのです。日本人は死ぬときの話は縁起がよくないと忌避しますが、死ぬときのことを考えるのは今を生きるために必要なことです。60代のうちに自身の70~80代を考え、これから先の人生をイメージしながら人生の棚卸をする。そして「子どもにどうにかしてもらう」というのではなく、きちんと自立し、自分の将来は自分で決めていくということが大切なのです。


『老後に住める家がない!』太田垣章子 著  ポプラ新書 刊  定価 880円(本体価格)+税

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

ページのトップへ

ウチコミ!