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相続法改正シリーズ #2 実家の不動産相続に大きな影響を与える可能性――「遺留分侵害額請求権」(1/3ページ)

藤戸 康雄藤戸 康雄

2021/08/30

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イメージ/©️maposan・123RF

相続争いに深く関係する「相続法改正点」

前回ご紹介した「約40年ぶりに大改正された相続法」について、前回の新たに制度化された「配偶者居住権」に続いて、「遺留分減殺請求権」「遺留分侵害額請求権」に制度が変わったことについて本稿でご紹介したい。

前回は、残された配偶者が住む家に困らないようにという配慮に基づいてできた新たな制度であったが、今回は「前からある制度の変更」ではあるが、実家の不動産相続に大いに影響があるし、それに限らず、遺産を相続する相続人全般に関わってくる。そして、相続人間における相続争いに深く関わる点でも、その内容や注意点を押えておきたいところだ。

「遺留分」とは何か?

テレビドラマなどで、大富豪の老人が亡くなって、顧問弁護士が預かっていた遺言書を家族全員の前で読み上げる場面を見たことがある人も多いだろう。

その内容が「全財産を愛人である〇〇に贈与する」などと書かれていて、紛糾する場面があることが多い。民法では、このような理不尽な遺言書が適法に成立する(偽造などではなく正真正銘の遺言書である)場合であっても、残された家族が住む家を失ったり生活に困ったりしないように、一定範囲の法定相続人に保障された遺産をもらう権利を定めている。これが「遺留分」と言われるものだ。

遺留分は相続人ごとに、「直系尊属のみが相続人である場合は遺産の3分の1、そのほかの場合は遺産の2分の1、ただし相続人が複数いる場合は、これらの割合に法定相続割合を乗じた割合」「兄弟姉妹には遺留分はない」と定められている(民法1042条)。

テレビドラマの例のように、有効な遺言があって「愛人に全財産を贈与する」と書かれていても、仮に相続人が正妻と子どもが二人であったなら、正妻には遺産の4分の1を、子どもたち2人にはそれぞれ遺産の8分の1を請求する権利があることになる。これが遺留分という民法上で保障された権利なのだが、権利は必ずしも行使しなくてもよく、「おれは親父の遺産なんかいらないよ」ということもできる。

次ページ ▶︎ | 旧制度ではどんな弊害があったか? 

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この記事を書いた人

プロブレムソルバー株式会社 代表、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピュータメーカー、コンサルティング会社を経て、東証2部上場していた大手住宅ローン保証会社「日榮ファイナンス」でバブル崩壊後の不良債権回収ビジネスに6年間従事。不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、日本の不動産証券化ビジネス黎明期に、外資系大手不動産投資ファンドのアセットマネジメント会社「モルガン・スタンレー・プロパティーズ・ジャパン」にてアセットマネージャーの業務に従事。これらの経験を生かして不動産投資ベンチャーの役員、国内大手不動産賃貸仲介管理会社での法務部長を歴任。不動産投資及び管理に関する法務や紛争解決の最前線で活躍して25年が経過。近年は、社会問題化している「空き家問題」の解決に尽力したい一心で、その主たる原因である「実家の相続問題」に取り組むため、不動産相続専門家としての研鑽を積み、「負動産時代の危ない実家相続」(時事通信出版局)を出版、各方面での反響を呼び、ビジネス誌や週刊誌等に関連記事を多数寄稿。

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