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【家族信託活用事例】廃業時、借金等の債務があった場合も家族に迷惑をかけずに将来の相続に備える(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2019/12/22

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<相談の要点>
・会社を経営しているが、いずれ借金を残して廃業したときに、個人資産がなくなることは避けたい。
・家と土地は、確実に長男に引き継ぎたい。
・長女にも気持ちよく納得してもらいたい。

<提案>


・鈴木さんの名義になっている自宅と田畑を、長男に信託する。
・遺言で長女にある程度の金額を渡すことを明記する。

<提案のポイント>
1)信託には「倒産隔離機能」があります。倒産隔離機能とは信託財産が委託者の名義ではなく、受託者へと名義が変わることで、委託者が倒産した場合であっても影響を受けないということです。

2)信託財産が田畑の場合は、農地の譲渡になるため、農業委員会の許可(農地法)が必要になります。従って、信託しても土地は仮登記のままになりますが、相続が発生したときに本登記とすることができます。

3)鈴木さんが亡くなってから、長女さんが遺留分を請求することもできます。ただ、今から長男さんに信託しておけば、名義が長男のものになりますし、固定資産税も長男が払うわけですから、妹さんの心象を変えることができる。

<こんな結末が>
・実は信託手続き終了後に、長男には300万円の借金があることが発覚しました。長男は自己破産をしました。鈴木さんは土地や家が、長男の借金のかたとして取られるのではないかと心配されましたが、信託財産は、長男の財産ではないので取られることはありません。

一般に信託財産は、受託者の倒産・破綻等の影響も受けません。もしも受託者が倒産・破綻等になっても、信託財産を受託者の債権者が強制執行することは禁じられています。

・鈴木さんが会社を廃業した際、およそ500万円の借金が残ってしまいましたが、病気の悪化もなく、体をいたわりながら農業と仕事を兼業しながら自分で返済していく道を選びました。

・もし、相談をいただいた時に、長男の借金がわかっていたら、自己信託(受託者と受益者が一緒)を選択したかもしれません。

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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