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「ひとりで育ててやる」というプライドは意味がなかった。子どもには母親も必要

しばはし聡子しばはし聡子

2021/03/23

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イメージ/123RF

離婚後も両親で子育てする共同養育を実践しているパパのインタビュー。今回はお子さんと一緒に暮らすパパ初登場です。共同養育のカタチや思いをインタビューしました。

■共同養育への経緯をお聞かせください。

離婚する際に話し合いで月1回の面会交流と決めました。会わせたくないという気持ちはありませんでしたが、相手への負の感情があったのでたくさん会わせたいとも思っていませんでした。当時は、時間にも厳しくて5分遅れるだけでイライラしていたのを今でも覚えています。

今では、元妻が「会いたい」と連絡があれば一緒に過ごしてもらうようにしていますし、私自身も仕事で忙しいときにはお願いすることもあります。元妻は隣の駅に住んでいるので、最近では子どもだけでも行けるようになりました。元妻の家や実家に泊まりで行ったりして楽しんでいます。

学校での出来事は共有するようにしていますね。運動会などの行事も来てもらっていますが、それぞれが親を連れてくるので、バッティングしないように居場所をあらかじめ伝えるようにするなど工夫しています。

■前向きになれたきっかけを教えてください。

離婚後1年ほど経った頃でしょうか。ある方に仕事の相談をしていたら不意に家庭のことについてアドバイスを受けたんです。「まずは元妻へ自分から謝りなさい」と。「なぜ謝らなくちゃいけないのか?」と腑に落ちなかったのですが、自分を変えてみたい思いもあり、何に謝るかも決めずに「今までごめんね」と謝ってみたんです。

すると自分自身に大きな変化が起きました。謝った途端に自分の悪い部分に気付き始めたんです。家の片付けをしていなかったり、出産のタイミングで仕事を優先したりと、夫婦関係を悪くしたきっかけが自分にあったことがあふれてきました。今までは「妻が悪い」と思っていましたが、離婚の経緯には自分自身の至らなさがたくさんあったんですよね。

元妻は私から謝ったことに対してさぞかし驚いたことでしょう。許せないこともたくさんあっただろうに、元妻は「いいよ」って笑ってくれました。プライドだけで妻に勝ちたいと思っていても意味がないと感じた瞬間でした。

元妻の立場を思いやれるようになりましたね。母親が子どもと離れることってすごくつらいだろうなとか。シングルファザーって世間的に「すごいですね」って褒めてもらえるんですよ。一方で、妻の立場は社会的に偏見もあるはず。つらい思いをしているのだろうと思いを寄せられるようにもなりました

■共同養育するにあたり大変だったことはありますか。

自分自身プライドから解放されるまでは大変でした。意地でも自分がひとりで育ててやると思っていたけれど、それって意味がないんですよね。自分から歩み寄りふたりで育てた方が自分も楽になれるし、ひとりで育てることや母親を排除することに固執することは無駄だと思えるようになりました。

元妻の悪口で美味しく酒を飲んでいて同情を買って認めてもらって嬉しいと思っていた時期もありましたが、くだらないことだと気付きました。感情抜きで子どもにとってなにが大切か道筋ができたことで楽になれましたね。

■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。

自分自身にしてほしいことはなにもないけれど、母親ならではの子どもとの関わりをしてくれるのはうれしいですね。

私は、とりあえずボーリング行ったり公園に行ったりと適当なのですが、元妻はママ友と子どもを交えて大勢で遊んだりするので子どもがよその子どもと関わる機会を持てるんですよね。私には絶対できないしすごいなって思います。プリキュアの映画も私は結構キツいので連れて行ってくれるのは本当に助かります。

■共同養育はどんなメリットがありますか。 お子さんはもちろんご自身にとってもいいことがあれば教えてください。

メリットだらけですね。とくによかったと思うのは、子どもたちが学校の友達と母親の話を普通にできること。離れて暮らしていることは友達も知っているようですが、母の日も母親がいないのではないからタブーにならず話せる環境をつくれたのはよかったです。

私も心に余裕ができるようになりました。以前は頭の中がいつもグルグル回っていて、子どもがグズったりすると厳しくしてしまったこともありましたが、今は余裕を持って接することができます。あと、子どもと母親が会うこと自体にストレスを感じなくなって楽になりましたね。相手が敵じゃないって思えるようになったのは大きなメリットです。

■ご自身のこれからの夢やビジョンがあれば教えてください。

これからも子どもが喜ぶことをたくさんしていきたいです。元妻も交えて4人で旅行に行けたらいいなって思っています。今はそこまでの関係が気付けていないので、まずは食事をしたりすることから増やしたいと思っています。将来、子どもの結婚式に元妻も気兼ねなく参加してほしいですね。

妻が再婚して子どもができたとしたら、子ども同士遊んでいる光景は想像するとほのぼのしますね。血のつながりを大切にしたいです。

一方で、私自身は再婚して家族をつくりたいとは思わないです。子どもには母親がいますし、一緒に住んだりするとトラブルの要素になる気がして。パートナーはいたらいいなと思うので、お付き合いする際には結婚はしない意向を事前に伝えています。友人からは「ひどいな」と言われることもありますが、一番守りたいのは子どもの笑顔と穏やかな生活です。

■読者の方へメッセージをお願いします。

子どもに会えない母親の立場である友人がいるのですが、毎日子どものことを想っていて母の愛は偉大だなと感じます。会わせないというのは親のエゴ。夫婦の間に何があったかはわからないけど子どもには関係ないですよね。

仕事で苦手なお客様っているじゃないですか。それでもお客様だから丁重に対応できるのだからプライベートでもできるはずです。もしかしたら、自分の意志だけではなく両親の意向もあるかもしれません。両親の顔色を見るのではなく、目の前の子どもに目を向けるとよいと感じます。

あと、私が強く思うのは「争うのは絶対ダメ」ということです。弁護士をつけて裁判したりすると夫はより一層構えて臨戦態勢になります。親同士が争っているのは子どもにとってよいことではありません。

それよりは、歩み寄ったり謝ったりすることを伝えたり、子どもへの手紙を送り続けたりした方がかたちとして残るしよいのではないかと思います。誕生日やクリスマス以外にも送り続けることで、受け取った夫側の気持ちも少し動いていくのではないでしょうか。

親権を取ることや会うことを目的にしがちですが、会えていても関係性が悪いと本末転倒です。子どもといい関係をつくるために相手を責めたり相手を変えようとするのではなく、まずは自分からできることをしていくことがよいかもしれませんね。

私は、現在ひとり親支援協会に所属していてシングルマザーと話す機会がありますが、面会交流に関しては各々で意見が大きく分かれます。私の考えを押し付けることはできませんが、誰か一人でも離婚後もふたりで子育てに関わることが大事だと気付く人がいればいいなと願っています。

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この記事を書いた人

一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント

1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️

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