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4人に1人がフルローン 20代の購入も2割に接近 若者市場化が進む「首都圏新築分譲一戸建て」

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文/朝倉 継道 イメージ/©︎Sdecoret・123RF

リクルート住まいカンパニーが、この3月(2021)、「2020年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」の結果を公表した。03年よりスタート、途中停止期間はありながらも(09年4月~12年9月)現在まで続いている息の長い調査である。

調査項目もしっかりとツボを押さえたものになっているため、市場実態を把握するには欠かせない資料のひとつとなっている。

調査エリアは、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に加え、茨城県の一部(つくば市・つくばみらい市・守谷市・取手市)となっていて、調査対象は、同地域にて20年1月~12月に新築分譲一戸建ての購入を契約された方たちだ。

なお、今回のデータ集計数は3345件とのこと。Webと郵送を併用するやや手間をかけた調査が行われている。目立ったトピックを紹介していこう。

一戸建て購入者に東京脱出の傾向?

購入物件の所在地については……
「東京23区以外の割合が2014年以降最高の88.0%に」(14年は80.4%)

購入物件の所在地と購入した方の住所の関係では……
「東京23区の居住者が東京23区以外のエリアに購入した割合が50.6%と、2014年以降でもっとも高くなった」(14年は33.7%)

ということで、新築分譲一戸建て購入者の“東京離れ”が徐々に進んでいる……そんな傾向が示されている。今後の推移が注目されるところである。

平均購入価格は3825万円 14年以降最低に

平均購入価格の推移

2014年 3936万円
2015年 4089万円(上昇)
2016年 4124万円(〃)
2017年 4140万円(〃)
2018年 4297万円(〃)
2019年 3902万円(下落)
2020年 3825万円(〃)
…2014年との差 -111万円

ご覧のとおり、上昇基調が続いていたあと、19年に大きく下落。20年も引き続き下がったという結果だ。新築分譲マンションの数字とのコントラストが目立つ。さっそく比べてみよう(株式会社リクルート住まいカンパニー「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査」より)。

2014年 4340万円
2015年 4975万円(上昇)
2016年 5081万円(〃)
2017年 5452万円(〃)
2018年 5402万円(下落)
2019年 5517万円(上昇)
2020年 5538万円(〃)
…2014年との差 +1198万円

購入価格がグングン上がるマンション、そうでない一戸建て、ということで、双方の市場のかたちに乖離が生じている近年の状況である。

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購入者世帯の世帯主年齢では、20代の割合がさらに伸長

購入者世帯の世帯主の契約時年齢では20代の伸長が続き、特に目立つ結果となっている。

2014年 12.0%
2015年 13.6%
2016年 14.0%
2017年 16.0%
2018年 15.2%
2019年 17.0%
2020年 18.4%

なお、サンプル数は19と少ないが、購入物件の所在地が茨城県内の場合、数字はさらに伸び、20代は36.8%を占めている。さらに、30~34歳までを加えると、全体の6割以上(63.1%)に及ぶ。

北関東では、新築分譲一戸建ては若者の買い物になっている……? 栃木、群馬のデータも気になるところだ。

平均世帯総年収は昨年より上昇

昨年は712万円で、14年以降最低となった平均世帯総年収は、今回は741万円と若干上がっている。なお、14年の首都圏新築分譲マンション購入者の平均世帯総年収は801万円。一戸建ては720万円だ。このときの差は81万円である。

しかし、現在は「一戸建て741万円」「マンション985万円」と、その差は244万円にまで開いている。双方市場における乖離の傾向が、ここでも見られるといってよいだろう。

平均自己資金は下がり、フルローン率は上昇

平均自己資金は468万円。14年以降もっとも少ない額となっている。ちなみに、14年は827万円だった。

また、購入にあたってフルローンを組んでいる(自己資金0である)人の割合は25.9%。こちらは14年以降最大の数字である(14年は12.6%)。さらに、「自己資金0」と「自己資金200万円未満」を合わせると割合は53.2%に。5割を超えてくる。

多くの人が、手元の資金は大変少ない状況ながら、ローンのパワーを活かして、一戸建てのマイホームを手にしている。

「駅近」離れの進行続く

「物件を検討するうえで重視した項目」では、

「最寄り駅からの時間」
「通勤アクセスの良いエリア」

これらの重視されるイメージの強い2項目の数字での減少傾向が目立っている。いずれも16年以降、5年連続で減少していることが分かる。

(最寄り駅からの時間)
2014年 70.3%
2015年 72.1%(増加)
2016年 72.0%(減少)
2017年 70.5%(〃)
2018年 63.9%(〃)
2019年 57.4%(〃)
2020年 56.6%(〃)

(通勤アクセスのいいエリア)
2014年 48.4%
2015年 49.5%(増加)
2016年 48.4%(減少)
2017年 48.0%(〃)
2018年 40.4%(〃)
2019年 34.6%(〃)
2020年 30.9%(〃)

新築分譲一戸建てを選ぶユーザー層において、近年、「駅近」「通勤利便性」へのニーズが徐々に減少している様子が見て取れるだろう。また、それを実際に表すように、「2020年の契約物件における最寄り駅からの平均徒歩分数」は14.0分で、14年以降もっとも長くなっている。

次ページ ▶︎ | 新築マンション市場との分断さらに深まる 

新築マンション市場との分断さらに深まる

当調査の対象者~結果的に新築分譲一戸建てを購入された方~に対して、「並行して検討した住宅」の種別を尋ねた結果、「新築分譲マンション」を挙げられた割合は23.0%。ちなみに14年は35.6%だった。その後連年減少が進んでいる。

さらに、複数の種類の住宅を検討せず「新築一戸建てのみ検討」したという人は39.3%で、こちらは14年以降最大である。

以上、リクルート住まいカンパニーが公表した「2020年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」の結果から、いくつか目立った内容を拾い上げてみた。

なお、賃貸住宅オーナーにとってもっとも気になる部分といえば、やはり、新築分譲一戸建ての購入者が年々若年化していることだろう。それを支えているのが、フルローンの増加にみられる資金環境の変化である。

新築分譲一戸建ては、いまや、エリアによっては、分譲マンション以上に入居者を物件から吸い上げる脅威の源となっているのかもしれない。

 

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