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【家族信託活用事例】共有名義の財産(不動産)――迅速な意思決定と節税も可能になる(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2020/02/21

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<相談の要点>
・姉と弟の共有名義になっている実家(空き家)を売却して、障がいのある弟のために使いたい。
・姉(福岡)と弟(神奈川)が離れて暮らしており、手続きに時間もお金もかかるので、姉の単独名義にして、姉が手続きを進めたい。

<提案>

・委託者の弟が、自分の持分を姉に信託し、受益者を自分(弟)にする。
・信託後は、姉の意思で自宅を管理処分することができる。

<提案のポイント>
・弟の持分を姉の持分にする単純な名義変更は贈与になり、贈与税が発生します。同じ名義変更ですが、信託の名義変更は税金がかかりません。
・共有を解消して信託にすれば、家の売却に関しても、姉ひとりで判断、実行できます。
・不動産業者、司法書士、税理士も姉との話し合いで進めることができるため、神奈川まで来て弟の意向を確認する必要はありません。
・売却代金も姉が管理するよう契約書に明記。弟の症状が重くなり、寝たきりになった場合などで介護費用がかさんだ場合は、売却代金を弟のために使います。

<相続で共有名義になるということ>
1軒の空き家の名義が数人の共有から、さらに相続が発生して次の世代へと持分が細分化されると、共有名義が10人、20人と膨れ上がってしまうケースがあります。固定資産税などの税金負担も考慮しなければなりませんし、空き家で何か問題があった場合は、全員の責任になります。

また、空き家の修繕・管理、建て替え、売却などの必要が出てきたときも、共有者全員の合意が必要となるので、すぐに決断することもできなくなります。

ただし、名義を1本化するには、共有持分を購入するための対価が必要ですし、生前贈与であれば贈与税、遺言であれば相続税もかかります。家族信託を使って、ひとりの人に信託し管理処分の権限を預けることができれば、いざというときも一人の決断で済むので物事が素早く進みます。もし受託者になり手がいない場合は信託で単独名義にしてから、専門家(不動産業者、弁護士など)に任せるのがいいでしょう。

以前は、相続が発生した場合に、「共有にすれば、共有する人数分の控除が受けられるので共有にしましょう」といわれていました。しかし、共有不動産はのちのちトラブルの元になると思います。それを解決するツールとして家族信託は有効です。

 

 

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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