地盤問題について(2/2ページ)
皆川聡
2018/04/16
では、前回の続きです。新築後半年で雨漏りをしてしまったというお宅ですが、バスタブの中ではなく、なんと、バスタブの外側に水が湧き上がってくる!ということでした。結局、圧密沈下でした。
沈下の種類には、即時沈下(※1)、圧密沈下及び擁壁部の埋め戻し土で見られる圧縮沈下等がありますが、圧密沈下は、建物の不同沈下に繋がりやすい沈下で、盛土や建物の建設などにより、有機質土や軟弱な沖積粘性土に鉛直荷重が加わり、粘性土層から間隙水が絞り出されて地盤が沈下する現象です。
本件は、新築の建物の重みで鉛直荷重が加わり、粘性土層から間隙水がバスタブの外側に回り、湧き上がったと言えます。
住宅地盤の調査においては、主に支持力の推定に有効なSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)がなされていますが、本件のような圧密沈下量の推定には、精度が低いと言えます。また、住宅の沈下の場合は、支持力不足よりも圧密沈下に因る場合が多いため、圧密沈下が考えられる地盤では、SWS試験ではなく、土質試験をお勧めします。
なお、後日、グーグルマップの航空写真から、本件の対象地も含め辺り一帯の状況を確認すると、その道路沿いの一部の帯状地に、全体的なアスファルトの歪み、地盤の不安定さを確認することができました。 グーグルマップでもここまで確認できるんだ!と驚いた瞬間でした。
一方で、あるネットでの地盤調査の判定では、当該地域は特段注意喚起がなされている地域ではなく、一般的な地域内に存していました。 ネット情報の限界を感じた瞬間でした。
今回はここまでとさせていただきます。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
以上
注)※1即時沈下:砂地盤などでの相対的な表層部の変形。主な原因として、地盤の弾性的な沈下のため、沈下量も比較的少なく、その期間も短いのが特徴
この記事を書いた人
不動産鑑定士
株式会社あおい不動産コンサルティング。大手不動産鑑定会社、株式会社三友システムアプレイザルに従事し、その後独立。 不動産鑑定業務が主ですが、住宅診断(ホームインスペクション)も対応しております。財務諸表・会社法・税務等についても、スキームに応じた鑑定評価の立ち位置を認識しております。相続・事業承継関係等にも勿論対応させて頂きます。<br> 賃料の評価・査定につきましても、数多くの案件を携わっており、得意にしております。 [担当]物件調査 皆川聡は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。 個人間直接売買における皆川聡の詳しい役割はこちら