マンション売却時にかかる費用と、戻ってくるお金を全網羅。いつどんなお金が必要になる?
斎藤 岳志
2017/10/24
マンションを売却するには費用がかかる
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ライフスタイルの変化や転勤などの事情で、愛着のあるマイホームを手放す決断をすることになるケースもあり得ます。マンションを売却する際には、購入の際と違って、物件選びで迷ったり、住宅ローンの審査を考えたりする必要はないので、「いくらで売りたいか」を考えることが大切です。
ただし、たとえば3000万円の売値で買い手との契約が成立したとしても、みなさんの手元には3000万円が残るわけではありません。売却するにも費用がかかるからです。
売却したときの手取りがいくらくらいになるのか目安を知っておくためにも、マンション売却にかかる費用を知っておきましょう。
マンション売却にかかる費用はこれだけある
まずは、マンション売却にかかる費用にはどんなものがあるのか、その全体像を把握しておきましょう(図表1)。
(1)仲介手数料
(2)登記費用
(3)印紙税
(4)一括繰り上げ返済手数料
(5)譲渡所得税
ここであげた費用のなかには、必ず支払わなければならない費用と、場合によっては支払わなくてもいい費用があります。それぞれの費用の性格と支払うタイミングについて、具体的に見ていきましょう。
(図表1)マンション売却にかかる費用
<1>仲介手数料
仲介手数料は、不動産の売買契約が成立した際に、不動産仲介会社への成功報酬として支払う手数料です。中古マンションなどを購入する際にも支払いますが、マンション売却時にも支払う必要があります。
支払うタイミングとしては、売買契約時に半金、決済引き渡しの時に残りの半金を支払うケースが一般的ですが、決済引き渡しの際に全額というケースもあります。決済引き渡し時に支払う金額については、わざわざ自己資金を用意する必要はなく、通常は売却代金から差し引かれる形で支払うケースが多いです。
ちなみに、仲介手数料は宅建業法で上限額が決められており、「(物件価格×3%+6万円)+消費税」を超える額を支払う必要はありません。3000万円のマンションであれば、仲介手数料の上限は(3000万円×3%+6万円)+消費税=103万6800円となります。
費用のなかでは大きな割合を占めることになるので、心づもりをお忘れなく。
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<2>登記費用
売却時の登記費用は、住宅ローンを組んでいる人だけにかかる費用です。住宅ローンは家を担保にしているため、金融機関がその住宅に抵当権を設定しています。他人の抵当権が設定されたマンションを購入する人はいませんから、売却の際には抵当権を抹消する必要があり、そのための登記費用がかかるというわけです。
登記費用を支払うタイミングは、決済引き渡し時になります。登記の印紙代が実費で2000円(マンションによって若干の違いはあります)、司法書士への報酬を支払ったとしても総額で2万円前後に収まるでしょう。
<3>印紙税
印紙税は、契約書などを作成する際にかかる税金です。これも購入時と同じで、売買契約書に収入印紙を貼り付けて消印することで納めることになります。印紙税の金額は、売買価格によって異なります(図表2)。
ちなみに、3000万円で売却した場合、現在は軽減税率が適用になるので、印紙税額は1万円です。
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(図表2)契約金額と印紙税の額
<4>一括繰り上げ返済手数料
住宅ローンが残っているマンションを売却するには、残っている住宅ローンの全額を一括返済して、抵当権を抹消しなければなりません。そして、住宅ローンを一括返済する際には、一括繰り上げ返済手数料がかかります。
一括繰り上げ返済手数料は、金融機関によって異なるため、利用している金融機関に確認してください。【フラット35】の場合は無料ですが、民間金融機関の場合には、ローン残高にかかわらず一律で●万円といった定額制と、ローン残高の●%といった定率制の大きくふたつの方式があります。
なお、支払うタイミングは、決済引き渡し時になります。
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<5>譲渡所得税
譲渡所得税とは、マイホームを購入した金額より売却した金額が高かった場合にかかる税金です。
たとえば、2500万円で購入したマイホームを3000万円で売却した場合、500万円の利益が出たことになり、利益分の500万円に対して譲渡所得税がかかるというのが原則です(マイホームに対する軽減措置は後述します)。
マンションを売却した年の1月1日時点で、購入から5年以上が過ぎていれば長期譲渡に該当し、税率は20%(所得税15%+住民税5%)となります。一方、購入から5年未満の売却の場合は、短期譲渡に該当するため、税率は39%(所得税30%+住民税9%)です。なお、現在、所得税に関しては、2.1%の復興所得税が加算されるので、それぞれ15.315%と30.63%になります。
ただし、前述したようにマイホームに対しては軽減措置があるので、安心してください。マイホームとして居住していたマンションを売却する場合は、3000万円の控除があります。
つまり、売却益が3000万円を超えない限り、譲渡所得税はかかりません。先ほどの例でいえば、5500万円以上でマイホームが売れない限り、譲渡税がかかってくることはないということです。
売却前にリフォームやクリーニングはしたほうがいい?
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売却のために、直接、必要になる費用ではありませんが、よく相談を受けるのが、マンションを売却する前に費用をかけてリフォームやクリーニングをしたほうがいいのかということです。
これに関しては、必ずしもする必要はないと私は考えています。
まず、リフォームについては、購入した人が住みやすいように、自分で手を入れてもらうほうがいいからです。
また、購入希望者は必ずマンションの内見をしますが、だからといって業者に依頼してピカピカにクリーニングする必要はなく、できる限りの掃除と片付けをして、購入希望者がその部屋での生活をイメージできるようにすればいいでしょう。
マンションなど住宅内を魅力的な空間に演出するホームステージングという手法もありますので、興味のある人は調べてみてはいかがでしょうか。
たとえば、壁にあまりにも目立つ傷があるといったような場合は、もちろん、補修をしておいたほうががいいと思いますが、購入希望者に清潔で住みやすい部屋だと感じてもらうことができれば、無理に費用をかける必要はないと私は考えます。
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マンション売却時に戻ってくる費用とは?
ここまで、売却時に出て行くお金を見てきましたが、売却して戻ってくる費用もあるのです。どんな費用があるのか見ていきましょう。
(1)住宅ローン保証料
保証料は、万が一、住宅ローンが返済できなくなる場合に備えて支払う費用なので、完済してしまえば必要がなくなります。そのため、住宅ローンの保証料を一括払いしていた場合には、売却してローンを完済すると、未経過期間分の保証料が戻ってくるという仕組みです。
(2)火災保険料・地震保険料
火災保険や地震保険も、保険をかけているマンションを売却してしまえば、保険料は不要になります。そのため未経過分の保険料が戻ってくることになります。ただし、ここで忘れてはいけないのは、自分自身で保険会社に返還を求める手続きをしないと、保険料は戻ってこないということです。決済引き渡し日が決まったら、忘れずに手続きを行ないましょう。
(3)管理費・修繕積立金、固定資産税
これらの費用に関しても、引き渡しの前日までと引き渡し日以降での日割り精算になります。
本来、固定資産税はその年の1月1日時点の所有者が支払うものですが、慣例として日割りで清算をしています。
管理費・修繕積立金は、毎月決まった金額を支払うものですが、決済引き渡し日が月の途中だった場合に、日割り計算で清算する場合があります。
そのため、これはたとえば税務署や管理組合に申請して返還してもらうというわけではなく、通常は、引き渡し日を決めた時点で、不動産会社の担当者が精算表を作成することになります。売り主、買い主が清算金額を確認して、売買代金に上乗せをして、買い主が売り主に支払うという流れになります。
仲介手数料に見合ったサービスを受けるために
売却時にかかる費用と戻ってくる費用について見てきましたが、売却時には意外と費用はかからないことがおわかりいただけたでしょうか。しかも、それほど金額は大きくありませんが、戻ってくる費用まであるのです。
上でもお話ししましたが、売却時にかかる費用のなかで、いちばん大きな割合を占めるのが仲介手数料です。だからこそ、取引を仲介する不動産会社が、金額に見合ったサービスを提供してくれるかどうかが重要と言えるでしょう。
良い買い主をできるだけ早く見つけて、取引をスムーズにまとめてくれる不動産会社の営業マンを見つけられるかどうかが、マンション売却を成功させるためには何より大切なことになると私は考えます。
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この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
FPオフィス ケセラセラ横浜代表 百貨店在職中にファイナンシャル・プランナーの資格を取得。税理士事務所、経営コンサルティング会社などを経て、FPオフィス ケセラセラ横浜を開設、代表を務める。 マイホーム購入・売却相談のほか、不動産投資のサポートも行なっている。株式投資やFXなど一通りの投資を実践した後、2007年より不動産投資をスタート。現在は、自らの資産運用はほとんど中古マンション投資に絞って取り組んでいる。