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八王子・アパート外階段崩落事件のその後 尊い命と引き換えに制度は一歩前進(2/2ページ)

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法的責任と一生残る悔い

以上が、八王子市で発生したアパート外階段崩落事件に関する、国レベルでの現在までの動きとなる。

一方、賃貸住宅オーナーだ。今回の事件によって「工作物責任」のことをあらためて考えさせられたオーナーも多いだろう。あるいは、初めてこの言葉を知ったという人もなかにはいるかもしれない。

危険な建物を造ったのはあくまで施工会社で、オーナーはそのことをまるで知らなかったとしても、今回の事件のようなことが起これば賠償責任は基本としてオーナーが負うことになる。あるいは、そうなる可能性が低くはない。これは民法に規定されるところの「工作物責任における所有者の無過失責任」によるものだ(第717条1項)。

また、法的判断は措くとしても、自らの物件の不備によって入居者が亡くなったとすれば、オーナーにとっては心情的にきわめて厳しい結果となる。生涯にわたっての悔いを残すことにもなるだろう。では、オーナーは何をすべきなのか?

物件の異常は入居者が一番よく知っている

もちろん、普段から物件をしっかりと見回り、異常が無いか目を配ること、さらには必要なメンテナンスを怠らないこと、賃貸住宅オーナーとして当たり前に大事なことだ。

たとえ管理会社がいても丸投げせず、自ら動くことも大切だ。加えて「施設賠償責任保険」に加入し、いざというときのためのセーフティネットを敷いておくことも重要だろう。

そのうえで、われわれからぜひ勧めたいのは「アンケート」の実施だ。「物件に危険や異常が生じていないか? 気になることはないか?」――それを入居者に尋ねてみることだ。現にそこに住んでいる人たちに聞いてみるのだ。

そう提案すると、「なるほどそのとおりだよね」と、大抵答えが返って来るが、ほとんどのオーナーも管理会社も、なぜかこれに気付いていない。

物件に存在する異常や危険をもっとも察知しやすいのは誰か? そこに住んでいる人にほかならない。このあたりまえの事実をあたりまえに踏まえるならば、やるべきことは決まっている。入居者に対し、定期的にアンケートを募ることだ。ぜひ実行してほしい。

外階段、外廊下、壁、屋根、塀……などばかりではない。漏電の発生、ガス器具の異常、ベランダ手すりの劣化、外れやすくなった高い位置の窓枠……起きうる事故は人命にかかわるほど大きくとも、入居者からの発信が無ければ、外側にはほとんど見えてこない危険も賃貸住宅には数多いのだ。 

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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