最強の観光地はどこだ? 北海道? 京都? 沖縄? いえいえ、それは福島県のあの場所
朝倉 継道
2021/11/15
裏磐梯 桧原湖(ひばらこ)/©︎takanakai・123RF
日本最強の観光地はどこだ?
日本で「最強」といえる観光地はどこだろうか? 北海道だろうか? 京都だろうか? 沖縄だろうか? それとも東京こそが実は最強の観光エリアなのだろうか?
私はその答えを昔からもっている。結論から言おう。それは福島県の西側に広がる「会津地方」だ。
すると「え? 会津に何があるの? お城くらいしか知らないけど」と、すぐさま反応が出そうだ。だが、根拠は明白だ。
会津は、人気の観光地となるべき基本といえる8つの要素全てを高いレベルで備えている。これに迫るエリアはほかにほとんどなく、ほぼ完璧といっていい。ちなみに、多くの人が旅行先として憧れる北海道でも、8つの要素のうち備えているのは5つだ。さらに京都は4つでしかない。沖縄も4つだ。
と、いうわけで、まずはこの8つの要素から説明しよう。人気観光地の8大要素とは一体なんなのか?
人気観光地8大要素
その場所が日本の人気観光地となるべき8大要素。中身は大きく2つに分かれる。ひとつは「風景」、もうひとつは「体感」だ。そのうち、風景には5要素があり、体感には3要素がある。合計8つのあらましが以下のとおりだ。
風景5大要素
「城」
壮大で優美な天守閣(現存もしくは優れた再建例)をもつ城がそこにある
「社寺」
国宝・重文クラスの建造物や文化財をもつ社寺が蝟集する地域である
「水景」
ほかに秀でた景観をもつ海、川、湖沼が見られる。特に山間の湖があるとよい
「山景」
地域を象徴する美しい山の景色が望める。あるいは同じく高原や平原、森林等
「街景」
歴史に根差した伝統的な町並みや、同じく美しい集落の景色を眺められる
体感3大要素
「温泉」
歴史ある温泉に浸かり、温泉地での滞在を楽しめる
「グルメ」
地域固有の食文化や、その地方ならではの珍しい食材、有名な料理を楽しめる
「歴史と文化」
日本史の著名なトピックに綴られるような出来事の舞台となった場所である。または、日本を代表するような伝統的な祭事・芸能・産業などが根付く地域でもある
無論、現代において人々の観光ニーズは多様だ。珍しい乗り物に乗るためにその地域を訪れる人や、水族館や動物園を目指す人、アニメや漫画の聖地を巡る人など、現在はさまざまな観光のかたちがある。
そのうえで、上記の8大要素は、その地域のもつ「光=自然や文化」を「観る」という意味で、より多くの人々を「観光」に惹きつける基礎的素材を挙げたものといっていい。すなわち、これらは過去より絵葉書やカレンダーのモチーフとなり続けてきた風景であり、さらには、地域の代名詞となる味であったり、イベントであったりということだ。
なお、「歴史と文化」は2つに分けてもいいが、9大要素と広げるよりも、ここは数字の収まりがいい“8”を採ってみた。
「北海道」VS「京都」VS「沖縄」
上記8大要素をモノサシに、日本の横綱級人気観光エリア3つを見ていこう。
まずは北海道だ。
風景5大要素のうち「水景」「山景」「街景」にポイントが付く。摩周、屈斜路、阿寒、支笏、洞爺の5大カルデラ湖(水景)、各地に広がる広大な平原(山景)、いわゆるレトロな風景を美しく残す函館、小樽(街景)の存在が、とりわけ強力な要因となっている。
一方、ポイントが付かないのが「城」「社寺」だ。さらに、体感3大要素のうち「歴史と文化」が、北海道の場合、他地域に比べボリュームが薄い。結果、8大要素のうち北海道が獲得できるのは5つとなる。前述したとおりの5ポイントだ(もちろん、アイヌはじめ複数の先住民族文化の存在については、個人的に深く理解しているつもりだ)。
次に京都。
「社寺」「街景」「歴史と文化」は、圧倒的な超一級品となる。「グルメ」もレベルが高い。当然ポイントがつく。しかし、ほかはすべてが不足している。よって合計は4ポイントだ。「東山三十六峰(山景)や鴨川(水景)を無視するのか」と文句を言われそうだが、これらは京都における「歴史と文化」に含まれるべきだろう。
そして沖縄だ。
国内では最も多くの人々の心を惹きつける美しい海(水景)を擁している。ワイルドな亜熱帯林の景観(山景)も加え、風景5大要素のうち獲得ポイントは2つとなる。加えて、独自性に溢れる「グルメ」、同じく独自性が豊かな「歴史と文化」にももちろんポイントが入る。合計4ポイントだ。
ほかの人気エリアを超える「会津の8ポイント」とは?
そこで、いよいよ会津を見てみたい。なお会津には、北海道の大平原、沖縄の珊瑚礁の海といったほかに突出した要素は存在しない。ただ、ポイントが獲得できる合格点以上の要素を拾っていくと、これらを面白いように次々モノにできていく。福島県の一部という、北海道や沖縄県全域などに比べると圧倒的に狭いエリアであるにもかかわらずだ。
論より証拠。並べてみよう。
風景5大要素(会津の場合)
「城」
会津若松市の鶴ヶ城(若松城)。天守は再建だが造りがよくスケールも壮大
鶴ヶ城(若松城)/©︎mtaira・123RF
「社寺」
会津はいわゆる仏都。貴重な文化財を擁する古社寺が集中する地域
重要文化財の会津さざえ堂/©︎terkung01・123RF
「水景」
猪苗代湖と裏磐梯湖沼群による印象の異なる組み合せが特に絶妙
「山景」
磐梯山、尾瀬など、会津は山と高原の優れた景観にあふれた地域のひとつ
猪苗代湖から望む磐梯山/©︎mtaira・123RF
「街景」
大内宿、蔵の町・喜多方と、会津は貴重な風景の残るスポット2つを擁している
蔵の町・喜多方/©︎yokokenchan・123RF
体感3大要素(会津の場合)
「温泉」
歴史ある東山温泉、秘境の湯・桧枝岐温泉など、名湯が各所に点在する
東山温泉街/©︎torsakarin・123RF
「グルメ」
全国ブランド「喜多方ラーメン」を擁するのが会津。酒どころとしてもよく知られている。山間地らしい工夫に満ちた料理や食材にも逸品が多い
日本3大ラーメンのひとつ 喜多方ラーメン/©︎torsakarin・123RF
「歴史と文化」
何より日本最後の内戦である戊辰戦争の大舞台。武家文化が花開いた拠点のひとつともいえる
――以上、会津はすべてが合格点に達する。満点8ポイントをゲットだ。
いかがだろうか。このとおり、大きなお城、古いお寺、きれいな湖、美しい山、歴史の大舞台、タイムスリップしたような家並み・町並みと、これらを観てきたうえで、さらに「地元の美味しいものを食べたい」「温泉にも入りたい!」といった超わがままなリクエストにも、会津はしっかりと応えてしまう。いわばイイモノなんでもアリな、すごい観光地が実は会津だ。
なお、同じような場所は、ほかに挙げるとすれば信州・長野県しかないが、こちらはエリアが広い。会津はそれに比べると面積として半分にも満たない。ずっとコンパクトだ。
よって、こうした凝縮性も考えたうえで、私が思う日本最強の観光地は、福島県会津若松市を中心とした会津地方となるわけだ。
日本の美しい風景を一箇所で根こそぎ観てしまいたい外国人がもしもいれば、一番に推してあげるべき地域こそが、まさに会津といえるだろう。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。