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ぼったくり? 田舎の「固定資産税」―― 売れない空き家問題に隠れたもう1つの問題(1/2ページ)

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イメージ/©︎hzind・123RF

「査定価格=売却価格」ではないという現実

2021年4月に民法と不動産登記法が改正され、相続登記が義務化される法案が公布された。実際の義務化の目途は、24年春とされる。法律はできたが、空き家問題の根本的な解決になるかは不透明で、実際に処分するにはさまざまな問題が潜んでいる。


解決が難しい所有者不明の土地問題 写真は法務省ホームページ 撮影/編集部

甲信越出身の還暦が視野に入るAさんは、この数年で、生まれ育った家、母方の祖母の家、病弱な叔母が住んでいる家も叔母が亡くなったら相続してほしいと言われ、「最悪」なことに兄弟2人でこの3つの空き家を相続しなくてはならない可能性がある。

そこでAさんは、都内から遠い祖母が住んでいた家と土地を売却することにした。売却にあたって周辺を調べたところ、周辺は高齢者が多く、若い人と出会うことはほとんどない。人口が減っていることもあるのか、コロナ前は人が集まっていたコンビニが姿を消していた。そんな状況からAさんは「嫌な予感」を禁じ得なかった。

とはいえ、このエリアの基準地価の平均は1㎡あたり2万円。公示地価は1㎡=2万7500円程度。いずれもバブル期のピークだった1991年の4割程度。今も年1~2%前後ずつ下落しており、全国の1500余りの市区町村の地価ランキングでは1000位前後の地域である。

Aさんが相続した土地はJRの最寄り駅から7分ほどの宅地で、広さは500坪あまり。

その周辺の土地価格の相場を調べてみると、同じJRの最寄り駅の周辺で、広さ90坪の土地が坪単価6万円ほどということが分かった。また、地元不動産業者に相談してみると、敷地に畑地が入っているため、自己負担で家を解体、整地して売れば2000万円近くで売れそうだという。

残置物処理を含む古家の解体と整地の費用は200万~500万円近くかかりそうなことも分かり、「それなら現状のまま不動産業者に売却しても、手元に1500万円ほど残りそうだ」と最初Aさんは思った。

坪単価6万円の査定が結局3分の1程度に

Aさんが相続した物件は、市町村合併前の旧町役場の近くにある県道に面した宅地ということもあって「需要があるから、時間をかければ高く売れる」と助言してくれた人もいた。また、別の不動産業者によると「駅から数分だし、県道に面しているので坪10万円以上で売れるのでは?」とも言われた。

そこでAさんは「売り地」という看板を出す方法もあると思ったものの、病弱な叔母がひとりで暮らす家もある。今後、その家も相続するとなると、兄が相続した父方の実家もあって、兄弟で3つの空き家を持つ可能性もあり、処分できるうちに売却しようと決心した。

しかし、実際に売却しようと動き出すと、「査定額=売却額ではない」というこれまでの不動産業者の話はあくまでも仮定の話で、現実はそんな簡単なものではないことを思い知らされることになる。

というのも、地元不動産業者の話の前提は、土地の広さが100坪以下の話だった。Aさんが相続した家は、500坪あまりの広さがある土地だ。しかも、江戸時代の母屋や蔵、門などは取り壊したが、建売業者らの話では「それだけの広い土地を一括で売ろうとすると、かなり減額されますよ」ということだったのだ。

実際、不動産業者が現地の確認などを行ったところ、大きく値引きされ、古家解体費を差し引いた売価は1000万円を大きく割り込んだ。やむなくAさんはそれで手を打った。結局、最も高い価格の公示地価の3分の1前後の価格になってしまったのである。

この業者は、買い取り後は複数区画に分けて、分譲住宅地にする可能性があるという。その場合、土地を買い取った業者が利益を十分に確保できる最低ラインの価格を打診してくる。

もちろん、土地の売却実績が豊富な不動産業者であれば、高めの査定額になる。業者の実力相応な金額になるため、金額に差が出てきてしまう。高く売りたいと思っても、見知らぬ地方でいい値を付けてくれる不動産業者を探すのは、時間的にも労力的にも一苦労だ。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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