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小説に学ぶ相続争い『女系家族』④――相続をひっかきまわす迷惑な人々の介入をどう防ぐか(3/3ページ)

谷口 亨谷口 亨

2021/10/21

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誰にも口出しさせない「信託」で遺言を遺す

このように、3人娘それぞれの周りによからぬ思惑を持った人たちがうろうろすることで、相続問題はさらに厄介なものに発展していきます。

こういったことは小説の中の問題だけではなく、現代でも同様のことが起こっています。しかし、そういった裏側のどろどろとした事情は、弁護士である私のところまですべて現れることはなく、実は見えているのはほんの一部です。

とくに問題となるのは、矢島家と同じように現金ではない財産が多い場合です。なかでも不動産に対する評価は人や世の中の状況によって違いが生じるため、時間をかけてもめたところで簡単に解決しないことも多くあります。そこに余計な口出しをしてくる親戚縁者が登場すれば、さらに相続争いは増幅。まとまりそうなものもまとまらなくなるのです。

結果、親戚縁者でもめにもめて、そのうち、誰かが弁護士のところに相談に来るというのがよくあるパターンです。

こうした場合、まずは相談に来た依頼者の思いがなるべく叶うようなスキームを弁護士として考えます。しかし、法律で決められたルールに沿う形で、財産を分割せざるをえません。
どんなに時間がかかっても、結局は、相続人それぞれに折り合いをつけてもらって解決に導くような形になります。

こういった面倒な問題を起こさないためには、相続人を取り巻く人たちの介入を防ぐしかありません。こうしたケースでも「信託」という方法は使いやすい手段です。

矢島家においてどんなスキームがよいかはここで説明しませんが、生前の被相続人の思い、相続人の思いを語っておくことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。そして、信託で「契約」という形になるため、前述のように第三者が介入しづらくなるのです。

矢島家も同様で、財産の遺し方をきちんと信託しておけば、周辺の人たちが相続をひっかきまわす余地もなかったはずです。

【連載】
「犬神家の一族」の相続相談
小説に学ぶ相続争い『女系家族』①――相続争いがはじまる根本的な原因はどこにあるのか
小説に学ぶ相続争い『女系家族』②――財産を次の代に引き継ぐ、相続を考えるタイミング
小説に学ぶ相続争い『女系家族』③――分割しにくい不動産を含めた「共同相続財産」の遺し方

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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