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小説に学ぶ相続争い『女系家族』①――相続争いがはじまる根本的な原因はどこにあるのか(1/3ページ)

谷口 亨谷口 亨

2021/07/12

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『女系家族』(上・下) 山﨑豊子 著/新潮文庫 刊/各825円(税込)

『白い巨塔』や『沈まぬ太陽』など、鋭い社会派小説を数多く世に残した山﨑豊子。『女系家族』は、四代続いた大阪・船場の老舗の木綿問屋「矢島商店」で巻き起こる遺産相続のトラブルを題材とした作品です。初版が刊行されたのは、いまから50年以上も前。これまでに若尾文子主演の映画や米倉涼子主演のテレビドラマなども制作されています。

小説の相続トラブルは、亡くなった婿養子の矢島嘉蔵(よしぞう)が遺した遺言状に端を発します。矢島家は初代からあと三代は、跡継ぎ娘に養子婿を取る女系(にょけい)の家筋で、嘉蔵も24歳の時、番頭から、跡継ぎ娘の松子の養子婿になり、矢島家の習わしにそって、初代の「嘉蔵」という名前を引き継ぎました。

そんな女系家族の矢島家では、本来の家長である松子が嘉蔵より早く他界し、矢島家の一切の財産を嘉蔵が相続することに。その嘉蔵も亡くなり長女・藤代、次女・千寿、三女・雛子へと財産が相続されることになります。その相続をめぐる3人娘の確執。彼女たちを取り巻く何やら下心を持つやっかいな人たち、そして、嘉蔵のお妾さんも登場して、相続問題が引っ掻き回されていきます。

そんな女系家族・矢島家の相続の原因、その解決法を探ります。

次ページ ▶︎ | 相続開始の3人娘、それぞれの状況

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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