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金融業界を揺るがす「太陽光ベンチャー」の倒産 ソーシャルレンディングの行く末はいかに(2/3ページ)

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囁かれていた資金繰りの厳しさ

このように書くと、ここまで順風満帆に成長し、何ら問題がなかった会社のように映るかもしれない。だが、資金繰りの厳しさ、それに伴う取引先に対する支払いぶりの悪さはこの間も業界内で囁かれ続けた。

当時、筆者が同社に取材したところ、そうした噂を否定していたものの、この頃のテクノ社は「人材面の補充・教育が追いついておらず、取引先の与信管理も甘い印象があった」(取引先)という。成長スピードに体制整備が追いついていなかったと見られる。

結局、上場計画は進展しないまま時は過ぎた。そして2020年8月には取締役2名が同時に辞任した。辞任理由は判然としないが、「このうち1名は主要株主の1人だったこともあり、経営内部が相当混乱していると捉えざるを得なかった」(取引先)。そしてこの頃を境に、綱渡りの資金調達はさらに厳しくなっていった。

ただ、どんなに赤字が続いても、どんなに信用不安が流れても、企業は資金繰りさえつけば倒産することはない。企業にとって「金融機関との関係が生命線」といわれる所以である。

テクノ社の資金調達を支えた「銀行取引状況」の変遷を見ると、極端な「多行取引」状態に陥っていた。発電事業で地域密着型のプロジェクトが多く、地域振興に絡めて各地の地銀から資金調達したことで、取引行の数は優に30を超えた。

しかしその顔ぶれはといえば、確たる「メインバンク」がおらず、融資取引のあったメガバンクも早々に撤退。ついには、他地域の信金・信組が融資残高上位に名を連ねた。

信用失墜 絶たれた資金調達

それでも資金調達が難しくなったとき、藁をも掴む思いで頼ったのがSBISLだった。

SBISLは2011年3月、ソーシャルレンディングサービスの提供を開始した。少ない金利負担で資金を借りられる場所を求める「借り手」と、リスクを取る分利回りの良い資産運用ができる場所を求める「投資家」双方にとって、最も必要とされる金融サービスの提供を目指してきた。

株式上場も準備し、後発だったため融資実績を伸ばしたいSBISLは、既存金融機関に代わる新たな調達先を探していたテクノ社にとって、まさに「渡りに船」の存在だった。

こうしてテクノ社は2017年5月から2020年10月までに、バイオマス発電所・太陽光発電所・不動産案件などの名目で計383億円もの資金調達に成功。しかし、テクノ社が本来の借入使途以外に資金を使っていた疑いが今年2月までに発覚し、ついには資金調達の道をすべて絶たれた。

この間、取引先や金融機関への返済が滞り続け、テクノ社の信用は失墜。さらに5月末には、静岡県や福島県内での発電事業への融資名目で、地元信金や地銀から虚偽の書類を提出し、計11億円を詐取したとして生田社長ら3名が東京地検特捜部に逮捕されるに至った。

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