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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#17 郊外衛星都市や地方都市に投資チャンス到来(2/3ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2020/08/28

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注目は地方都市 大化けの可能性も

さらにテレワークの領域を離れ、リモートワーク、つまり基本的には都心に行くことはなく、仕事は限りなくリモートワークで済ますことができるようになると、これまでの家選びとはおそらく全く異なる街を選ぶ人が出てくると思われる。地方都市への人の逆流だ。

地方都市の魅力は様々だ。物価が安いということに加えて、不動産価格も大都市圏に比べれば格段に安いといえる。自然が豊かというのも場所によるがおおむねそうだろう。人情がある、これも地域柄があるので何とも言えないが、少なくとも都会のような希薄な人間関係ではないだろう。これまではこうした魅力的な要素は、人によって感じ方は違う、あるいは合う、合わない、の違いこそあれ、地方都市の魅力だった。

ただこれまでは移住、定住を考える場合、なかなか地元に満足できるような仕事がないのがネックだった。必然としてまだ本格的にやってみたこともない農業に徒手空拳で挑戦する、2、3年で失敗、挫折。周囲との人間関係もうまくいかなくなって失意のもと都会に帰る、というパターンが多かったようだ。

ところが、ポスト・コロナの世界では、慣れない地域で職探しをすることがない。自分の得意な領域の仕事をネットを介在して続けながら、自然環境が豊かで食べ物がおいしく、なんといっても物価が安い地方で生活することができるようになるのである。ついでに広い敷地で家庭菜園でもやれば、収穫したトマトやキュウリ、ナスなどで食卓が賑わう。子供たちもマンション生活で階下の住戸に気を使うこともなく、のびのびと暮らすことができる。地方都市はポスト・コロナでは俄然、注目の住宅地に化ける可能性が大いにあると言えよう。


広い敷地で家庭農園。のびのびと豊かに暮らすことも/©︎123RF

地方都市での家選びは完全な生活ファーストとなる。ただ旅行気分で選択するのではなく、その地域で仕事をしながら暮らすことになれば、当然仕事がしやすい環境にあるかは非常に重要な要素となる。つまり、Wi-Fiなどのネット環境が整っているのはいうまでもなく、社会インフラとしてのレイヤーがどれだけ整っているかが勝負となる。ネットで何でも注文ができる。何もわからない地域の決まり事でもネット検索をすれば、一発で理解できる。こちらからの情報発信にもちゃんと対応してくれるところがある。街は開放的でよそ者に対しても親切に対応してくれることは、これまでの移住でも大事なポイントだったが、これからの「親切」は、生身の親切に加えて、こうしたソフトウェア、通信技術の整備にあるのだ。


庭先でテレワークというのも、これからの時代に合っているかもしれない/©︎123RF

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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