東京都(港区) 白金に佇む古民家風の和牛料理屋 厳選された肉料理が愉しめる 『牛泥棒』
ねこやま大吉
2020/10/09
洗練と懐かしさ 新旧共存の街「白金」
都営三田線・東京メトロ南北線の2線が乗り入れる白金高輪駅。大手町・六本木一丁目・目黒まで乗換えなしの駅である。「白金」と聞くと高級なブランドイメージが強いが、ちょっと裏路地に入れば白金商店街を中心に住宅街が広がっている。店もチェーン店は皆無で、昔から商いをやっている店が主である。鮮魚・精肉・生花・電器屋が軒を連ね、意外と生活感のある街だ。
都道305号線 それは恵比寿へと続く「シルクロード」
白金にはちょっとした休憩のできる店がないことに気付く。シロガネーゼに叱責されるかもしれないが、少々「砂漠感」が漂う……。やはりこんなときはスマホの地図アプリを開き、「オアシス」を求め、都道305号線という「シルクロード」を恵比寿方面へと歩く。空を見上げれば、ハゲタカのようにも見える旅客機が、羽田新ルートを我が物顔でかすめていく。
白金から恵比寿に向かう中間に差し掛かった頃、通りの向かい側に暖簾がかかっているオアシスが視界に入る。その店の屋号は『牛泥棒』。大正12年築の建物をリノベし、和牛を一頭丸々仕入れ、肉を熟知した料理人が腕を振るって提供する店だ。
酵母が生きる魔法の水 そして和牛料理に舌鼓
暖簾をくぐり2階へ。大正時代の建物というだけあり、梁がしっかりしている。スタッフに“泥棒”の意味を尋ねると、「おいしい肉を全部仕入れて他店に渡さないことからきています」と教えてくれた。なるほど、そういう意味なのか。
まずは乾ききった喉を潤す。メーカーの厳しい品質管理を守る店でしか飲めない、酵母が生きている白穂乃香(しろほのか)を気道に一気に流し込む。コクがあるのにさわやかな味、喉越しに酵母の香りが残る。まさに魔法の水だ。
メニューを開くも、どれもよさそうで目移りしてしまう。こんなときはコースが一番いい。店の名を冠した「満足して頂ける当店一押しの『牛泥棒コース』」を注文。
ハツコリーー脂がのっているのにコリコリとした食感で塩が旨味を後押し。
コローー甘い脂がさらに食欲を誘う。絶妙な火入れで旨味が凝縮。新鮮だからこそ、この旨さなのだろう。
インサイドスカートーーハラミの内側の希少部位。ほぼ市中には出回らない贅沢な串だ。柔らかく肉本来の味がする。赤身に程よい脂が差し込まれている。
牛肉炙り寿司ーー炙ったロースをシャリにのせ、その旨味が口内にこだまする。葱が絶妙な役割を果たす。
マンゴーシャーベットーー果物の甘みが、肉の残り香を一掃してくれる。最後のほうじ茶とのバランスもいい。今日の幕引きを知らせてくれているようだ。
コースの品数も多く、気付けば4時間近くも長居をしてしまった。都道305号線に佇む白金のオアシス、牛泥棒。掴まれ、そして盗まれたのは、己の胃袋だった。
今回お邪魔したおいしいお店:『牛泥棒』
住所:東京都港区白金5-10-12
交通:白金高輪駅・広尾駅 各徒歩10分
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この記事を書いた人
編集者・ライター
長年出版業界に従事し、グルメからファッション、ペットまで幅広いジャンルの雑誌を手掛ける。全国地域活性事業の一環でご当地グルメを発掘中。趣味は街ネタ散歩とご当地食べ歩き。現在、猫の快適部屋を目指し日々こつこつ猫部屋を制作。mono MAGAZINE webにてキッチン家電取材中。https://www.monomagazine.com/author/w-31nekoyama/