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『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)

パニック、サスペンス映画のように仕上げられたノンフィクション・ドラマ(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/03/04

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(C)2020『Fukushima 50』製作委員会

 

2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災。その規模はマグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大のものであった。本作は、あの日、原発の中に残り戦い続けた50人の作業員たちの姿を描いている。

巨大地震が生み出した想定外の大津波が福島第一原子力発電所を襲い、第一原発は全電源を喪失する。浸水被害も次第に大きくなり、このままではメルトダウンによる想像を絶する被害が発生してしまう。

1・2号機当直の伊崎(佐藤浩市)ら現場作業員は原発内に残り、原子炉を制御すべく奔走。所長の吉田(渡辺謙)は、状況を全く把握できない東電本店緊急時対策室の小野寺(篠井英介)や内閣総理大臣(佐野史郎)をはじめとする官邸からの指示に怒りを露わにしつつ、所員たちを鼓舞しながら指揮を執ってゆく。しかし、現場の奮闘も空しく事態は悪化の一途を辿り、近隣住民は避難を余儀なくされる。



同じころ、官邸では被害規模のシミュレーションが行われ、最悪の場合、被害範囲は東京を含む半径250㎞、避難対象人口は5000万人にのぼるとの試算結果が明らかになる。この数字は東日本壊滅を意味していた。

残された方法は“ベント”と呼ばれる手段。これは作業員が体一つで原子炉内に突入して行う手作業であり、過去、世界で実施されたことはない。しかし、他に方法はなく、何も情報がない中で作戦を敢行しなければならない。高い放射線量の中、誰がベントに向かうのか――。

原作は門田隆将著『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』。当時現場にいた90人以上への独自取材と実名証言で構成されたノンフィクションである。

この著書をもとにNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』(14)やWOWOW連続ドラマW『孤高のメス』(19)などの前川洋一が脚本化、『沈まぬ太陽』(09)や『空母いぶき』(19)の若松節朗が監督を務めた。東日本大震災による福島第一原発の未曽有の危機を、緊張感あふれる時間刻みの群像劇に仕上げている。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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