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『ターミネーター』の“正式な続編”がついに公開

28年前に残された疑問、そして、新たなドラマ展開がはじまる(3/3ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2019/11/08

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ヒロインのダニーがメキシコ人女性という設定がユニークだ。演じるナタリア・レイエスはコロンビア出身である。マッケンジー・デイヴィスはカナダ出身で、アーノルド・シュワルツェネッガーはオーストリア出身。メキシコで絶大な人気を誇るディエゴ・ボネータも出演しており、シリーズ中、最も国際色に富んだキャスティングとなった。国境問題やAIの進化といった話題も取り込んでおり、時代の変化に対応した、いま作られるべき形の続編であると言える。キャメロンの復帰により、シリーズはようやくあるべき姿に戻ったのである。

だが、本作には第一作と第二作を豊かなものにしていた情感の高まりがない。情感を誘うシーンがないわけではないが、ポテンシャルが低いのである。第一作のラスト、嵐が近づいている未来の戦場へと向かってゆくサラ。第二作のラスト、T-800型ターミネーターと別れざるを得なくなったコナー親子。情感のポテンシャルはここで最高潮に達し、観客の涙を誘った。『ターミネーター』第一作と第二作は優れたSFアクション映画であるとともに、男と女、そして親と子の愛の物語であった。

キャメロンは後に『タイタニック』(97)で大規模なスペクタクルとラブストーリーの要素を無理なく融合させるという離れ業を演じ、観客の涙腺を大いに刺激した。『タイタニック』は世界興行収入記録を樹立し、キャメロンはアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞している。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』は失敗作ではない。しかし、正当な続編である以上、やはり本作はキャメロンに監督してほしかった。キャメロンは大仕掛けのアクション映画であっても気持ちよく観客を泣かせてくれる稀有な才能の持ち主であり、そんな彼の資質こそが『ターミネーター』を産みだしたのだから。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』
監督:ティム・ミラー
製作:ジェームズ・キャメロン、デイヴィッド・エリソン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエス、ガブリエル・ルナ、ディエゴ・ボネータ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式HP:http://www.foxmovies-jp.com/terminator/index.html

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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