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感情を揺さぶって思い通りに物件を売り込む!

お客さんだけが知らない 普通の物件を「最高」と思わせる不動産仲介マンのストーリー営業術(4/5ページ)

大友健右大友健右

2017/02/07

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営業マンの「本命物件」に隠された裏事情とは?

ここで知っておいていただきたいのは、営業マンが本命物件にしたのは、「お客さんにとってベストな物件」とは限らないということです。

以前、別の記事で「AD(広告料)」というお金の流れについてご説明したことがありますが、不動産会社には不動産会社の事情で「優先的に契約を決めたい物件」というものがあるのです。

賃貸物件の仲介手数料は、宅建業法で「家賃1カ月分が上限」と決められていて、不動産会社はこれを越える金額を受け取ることはできません。貸し主、つまり大家さんから家賃0.5カ月分の手数料をもらったら、借り主(お客さん)かららもらう手数料の上限は0.5カ月分ということになります。

ですが、空室を優先的に埋めてもらいたい大家さんが、不動産会社に仲介手数料とは別のお金を支払うことがあります。それがADと呼ばれるお金で、不動産業界では半ば日常化してしまっているものです。

ADが出ない物件よりも出る物件の契約を決めたほうが売り上げは増えます。ADを1カ月分出してもらえれば、仲介手数料を合わせて家賃2カ月分の売り上げになります。ADが2カ月分出れば、3カ月分の売り上げです。

営業マンの多くは歩合給で働いているため、ADが出る物件の契約を優先して決めたくなるのは当然といえるでしょう。

そうなると、本当はお客さんの希望にピッタリの物件があっても、その物件には案内せず、ほかの条件が近いもののなかからADが出る物件を本命物件として紹介する…ということもあるかもしれません。

AD付き物件を見抜く方法は?

こんな話をすると、不動産会社の都合で物件を押しつけられるのはイヤだと思われるかもしれません。

もし、営業マンが本当のおすすめ物件を隠したまま、ほかの物件を本命物件として契約を決めようとしていた場合、それを見抜く方法はあるのでしょうか?

結論から申し上げると、それはむずかしいでしょう。

ADなどの情報は、物件図面の「オビ」と呼ばれる場所に記載されている場合が多いので(書かれていない場合もあります)、図面のオビを見せてもらえれば、営業マンがすすめる物件がADつき物件かどうかわかることでしょう。

でも、お客さんのほうから「オビを見せてください」と言うのは考えものです。不動産業界には、「10万円以下の仕事で人は動かない」という言葉があるのですが、営業マンからすると、「家賃1カ月分の手数料で、あまり面倒なことは言われたくない」という気持ちが働いてしまう可能性があります。

六本木ヒルズのように、1カ月の家賃が100万円以上する部屋を借りるのであれば話は別かもしれませんが、残念なことに、不動産業界には前述の言葉に象徴されるような文化があるのも事実なのです。

とはいえ、賃貸業界では仲介手数料の割引を行なうことが一般的になり、なかには、オビを隠さずに「これは手数料を50%引きにできる物件です」「これは手数料を無料にできる物件です」と説明してくれる営業マンも出てきているようです。

不動産会社はコンビニの数ほどありますから、手間を惜しまずに何軒かの不動産会社を回って、隠しごとをしない、信頼できる営業マンを探すのがおすすめと言えるでしょう。 

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この記事を書いた人

株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。

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