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賃貸マンションやアパートで「花火」はもちろん禁止? それとも?

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花火が“炎上”した夏

この夏、花火の話題がいくつかニュースやSNSなどを賑わせた。

そのひとつ、8月5日に東京都板橋区で行われた「いたばし花火大会」では、大きな火災が発生した。河川敷約2千平方メートルが焼けている。大会はすぐに中止となったが、幸いけが人は出ていない。

同じく8日に開催された滋賀県の「びわ湖大花火大会」では、地元住民と主催者との間で軋轢が生じていることが話題となった。有料観覧席を囲むフェンスによって、地元の方が花火を見づらくなったことなど、いくつか要因が重なっていたようだ。

こんな話もあった。

ある人気お笑い芸人が、自宅前付近と見られる場所で撮った写真を「X」(旧ツイッター)に投稿した。そこには、子どもたちが集まって花火を楽しんでいる様子が写されていた。ところが、これに対して「近所迷惑」等の批判が寄せられてしまった。一方で、「世知辛い見方」など反論も数多く投稿され、人や時代によって変わっていくものの感じ方や常識、良識といった判断基準が奇しくも浮かび上がるかたちとなっている。

賃貸マンションやアパートで花火をしていい?

そこで、こんな疑問だ。

賃貸マンションやアパートといった、賃貸集合住宅の敷地内で、子どもたちと花火を楽しむことは許されるのだろうか?

この記事では、気持ちや想いといった感情の面は措いて、やや“おカタく”答えをひもといていきたい。

「住んでいる賃貸マンションやアパートの敷地内で、花火遊びをしていい?」

契約書をチェック

まず、チェックすべきは建物賃貸借契約書だ。

条文の中に禁止事項の書かれた箇所があるだろう。多くの場合、借主(入居者)が、物件内もしくは敷地内等で――

  • 「行ってはならない行為」
  • 「貸主の書面での承諾を得ずに行ってはならない行為」
  • 「貸主に通知せずに行ってはならない行為」

それぞれが、リストアップされているはずだ。

よって、ここに行ってはならない行為として「花火」が書かれていれば、花火は問答無用で禁止だ。

一方、「承諾」や「通知」が必要ならば、それぞれ文字どおりとなる。

花火ではなく、「共用部分での火気の使用」などとある場合も、花火はまさに火気なので、当然同じ流れになる。

とはいえ、実際はこういうケースが多いだろう。「花火について契約書には何も書かれていませんが」――?

主な理由は、そもそも入居者による花火遊びを想定していないオーナーや管理会社が多いこと。さらには、国土交通省の標準契約書に花火についての記載がないことだ。ちなみに、後者は多くの建物賃貸借契約書がこれを参考にし、作られているというものだ。よって、自然にそんな結果となる。

(ただし、標準契約書には、発火性を有する危険な物品等の保管を禁じる記載はある。よって、住戸内等での花火の一定期間以上の「保管」がこれに触れる可能性はある)

では、そんな場合――契約書に花火についての言及がない場合、誰にも気兼ねせず自由に花火を楽しんでいいのか?

答えは「No」と、この記事では言っておきたい。

たとえ契約書に記載がなくとも、さらに、敷地が広く安全そうでも、トラブルを避けるため、花火をしたいならオーナーや管理会社には必ず相談すべきだ。

「花火? やめてください! 物件の駐車場で喫煙する人がいる、煙が漂って迷惑だと、ほかの入居者さんからお怒りのクレームが入ったばかりです。花火だともっと大ごとになります。契約書に記載が無かったのは申し訳ありませんが、ここはぜひ我慢して――」

慌てた様子で、そんな答えが返ってくるかもしれない。

決まりがあるのに違反すると…

なお、賃貸借契約書に、花火の禁止や、さきほど挙げたような条件が定められていた場合、これを無視して花火をし、火事を起こしてしまうと、事が重大になるおそれがある。

「失火責任法」では、重過失がなければ火事を起こした責任は負わないと定められているが、契約違反をした以上、重過失と認められる可能性も生じるということだ。くれぐれも注意したい。

道路ではOK?

では、住んでいる賃貸マンションやアパートの敷地内ではなく、前面道路(または接する道路)ではどうだろう? 家の前の道路といえば、昔から子どもたちが花火で遊ぶ定番の場所だ。

ところが、ここにはある法律が絡んでくる。「道路交通法」だ。

同法第76条第4項によれば、「道路上の人、もしくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げること、または発射すること」が禁止されている。

加えて、交通の妨害となるような方法での道路での「しゃがみ」「立ちどまり」等も禁止となっている。

道路上での花火遊びは、まさにこの法律に触れる行為となる可能性があるわけだ。

なおかつ、いまは「道路族」などという言葉もある。近所の路上から響いてくる子どもの声や、その周りの大人の声を耐えがたい騒音と感じる人が増えている。

ましてや、そこに煙も加わるのが花火だ。

「近くの道路で花火をやっている。通行の邪魔で危ない。道交法違反です」

そんな通報があれば、警察も立場上これを無視するわけにはいかないということになる。

もちろん、花火をしたい子どもたちやその親などが、近所のほとんどの方と知り合いで、日頃から交流も深いということであれば、話も違ってくるだろう。

しかし、そうでない場合、賃貸物件の住人が路上で花火を楽しむことは、いまどきそれなりのリスクを招くものと見た方がいい。

公園はどこも花火禁止?

以上、賃貸マンションやアパートの敷地内、あるいはそこに接する道路での花火遊びについて、前置きしたとおり「おカタい」答えを示してみた。

一方、世間ではこんな声も多い。

「昨今はどこの公園も花火禁止。子どもたちに花火遊びをさせてあげられる場所なんかありません」

それに対し、答えをいうと、実はその件については自治体等によって差がある。

たとえば、火気使用禁止の原則はあっても、子どもたちの楽しい思い出となる花火については、細かな決まりを設けた上で「OK」としているところも多い。

たとえばそのひとつ、東京都葛飾区の区立公園・児童遊園でのルールを抜粋してみよう。

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(区立公園内における花火の使用ルールについて)

葛飾区立の公園・児童遊園では、手持ち花火ができます。(一部の公園・児童遊園では不可)いくつか注意事項がありますので、ルールを守って遊びましょう。

――注意事項――

大きな音の出る花火、打ち上げ花火、煙が多く出る花火は使わないでください。

成人が付き添ってください。

午後9時までに終了してください。

※荒川河川敷の公園(荒川小菅緑地公園、堀切水辺公園、葛飾あらかわ水辺公園)は午後10時までに終了してください。

煙の向き、花火の音、騒ぎ声など近隣にお住まいの方や他の公園利用者への影響を考慮してください。

消火用のバケツと水を用意してください。

後始末をきちんと行いゴミを持ち帰ってください。

住宅に隣接している小さな公園・児童遊園は「煙」、「花火の音」や「騒ぎ声」などで苦情がくる可能性があり、苦情があった場合はすぐにやめてください。

一部の公園・児童遊園には「花火禁止」の看板が設置されています。それらの公園・児童遊園は、花火をしていた一部の方々が、近隣の方や他の公園利用者の迷惑となる行為を行ったため、花火の使用を禁止しています。

家族や友人同士などの少人数で個人的に花火をする場合は手続きの必要ありません。団体で利用する場合は、公園課管理運営係にご連絡ください。
-------------------------------

――こんなところだ。

SNSなどに飛び交いがちな曖昧な情報に安易に納得せず、管理者の正式なリリースを確認したり、問い合わせてみたりすることが大事となる。

(文/賃貸幸せラボラトリー)


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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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