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命も落とす事故も…物件の古い・新しいにかかわらず気をつけたいポイント

その物件、ヤバくない? 賃貸物件の「キケン」に目を凝らそう

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イメージ/©︎4zevar・123RF

油断は禁物 悲しい死亡事故も

賃貸物件を選ぶ内見の際、注意する人があまりいないポイントとして、建物の「危険性」がある。注意する人があまりいないのは、危険な建物は現実としてそれほど多くはなく、あってもそれが被害につながることも実質少ないからだ。

だが、油断は禁物だ。悲劇は決してゼロではない。なんの落ち度もない入居者が、建物や設備の劣化、不備などに巻き込まれ、死亡したり、大けがをしたりする事例はたびたび発生している。

築年数のかさんだ古い物件で特に注意したい「キケン」と、物件の古い・新しいにかかわらず気をつけたい「キケン」の代表例を以下に挙げていこう。これらにぜひしっかりと目を配ってほしい(危険はもちろんこれらだけに限らないが)。

1.築年数のかさんだ古い物件にありがちな代表的なキケン

外階段、外廊下、ベランダなどの劣化

昨年の4月、東京都八王子市のアパートで、崩れた外階段とともに入居者が転落、死亡するという重大な事故を発生させてしまったのがこのケースだ。ずさんな工事が原因で、外階段周辺の一部で腐食が起きていた。

【参考記事】八王子・アパート外階段崩落事件のその後 尊い命と引き換えに制度は一歩前進

また、この前年(20年)には、北海道苫小牧市でもアパートの外廊下が崩落、0歳児も含めた家族5人が負傷している。加えて、19年には沖縄県那覇市で賃貸マンションのやはり外廊下が崩落、部屋から出られなくなった住人を消防が救助した。さらに、16年には北海道函館市でもアパート外廊下の床が抜け、6人が重軽傷を負う事故が起きている。

【参考記事】北海道でアパートの外廊下が崩落 施設賠償責任保険の必要性

外廊下や外階段、ベランダといった建物の構造のうち外に露出する部分では、風雨や経年による劣化が当然のこと起きやすい。事故の予知には限界もあるが、日ごろ命を預ける場所だけに、グラつきや、部品・部材の腐食等がないか、ぜひしっかりと目を配りたい。報道されるに至らない程度の事故やケガならば、おそらくほかにも多数起きていることだろう。

シーズヒーター型(うずまき型)電気コンロ

IHクッキングヒーターへの取り替えが進み、近年あまり見られなくなったものの、うずまき状の金属製ヒーター(シーズヒーター)が付いた電気コンロは、かつてはワンルームなど単身用の物件ではよく見られていた設備だ。高温を発しても炎が見えないため、火災やヤケドなどの事故を起こしやすい。

なかでも特に危険なのが、スイッチが外枠に囲まれておらず、むき出しになった古いタイプのものだ。人の体や物がぶつかった際、偶然スイッチが押され、ヒーターが発熱することがある。この“絶滅危惧種”を万が一発見したら、入居は避けた方がよい。それほどにキケンだ。実際に火災事故も報告されている。

浴室内設置型の風呂釜

こちらも古くは集合住宅での定番。しかし最近はあまり見られなくなった設備だ。築年の古い物件でたまに出会うことがある。浴槽の横に並んでくっついている湯沸かし用の釜だ。

ちなみに、浴室内の風呂釜といえば「バランス釜」の名前を知る人も多いだろう。しかしながら、バランス釜と呼ばれるのは実は新顔で、歴史的にはこれ以前に「CF式」と呼ばれるタイプのものがあった。ところがこのCF式、一酸化炭素中毒を起こしやすいつくりとなっているため、より安全な新方式としてバランス釜が登場している。よって現在見られるものの多くは、そうした比較的安全性の高い方の「バランス釜」になっているはずだ(もちろん全てではない)。

とはいえ、CF式にしてもバランス釜にしても、これらはどちらも狭い浴室内でガスを燃焼させる基本的には危ない装置であることに変わりはない。万が一、古いCF式が浴室にあれば、その物件の入居は避けた方がよい。一方、バランス釜の場合も、故障や老朽化がないか常時見据えつつ、扱い方を熟知したうえでの操作が必須となる。

瞬間湯沸かし器

バランス釜がまだ見られるような古い物件では、キッチンにもよくこれが取り付けられている。家庭用の小型瞬間湯沸かし器だ。「開放式」と呼ばれる一酸化炭素中毒を起こしやすい構造であることは、昔からよく知られている。

そのため、さまざまな安全装置が内部に取り付けられてはいるが、古いものだとそれらが無かったり、不具合が生じたりする懸念も増してくる。そのうえで、たとえ不具合が無くとも、安全性が高められた新型製品でも、「十分な換気なしの使用は絶対に避けなければならない」のがこの道具だ。

安全装置がせっかく作動し火が消えても、状況を甘く見てまた点火させてしまうなど、機械は正常でも使用者の知識や意識が足りない場合も、深刻な事故を招きかねない。

旧耐震基準

築40年以上にもなる古い建物でも、設備や内外装がしっかりとリニューアルされ、賃貸住宅として堂々現役で使われている例などいくつもある。

しかし、その建物が1981年5月31日までに建築確認された、いわゆる「旧耐震」基準の建物であるならば、地震の揺れに対しきわめて脆弱であることは間違いない。コンロがIHになっていようが、風呂釜がバランス釜から安全な屋外設置式(RF式)に換えられていようが、もはや関係ない。正しく耐震補強され、旧耐震の状態を脱していない限り、それはキケンな建物となる。

なお、工事に要する期間を考えると、例えば81年秋以降などに完成した建物でも、建築確認日は5月31日以前となるケースが多数あると推測される。すなわち、旧耐震基準が適用されている可能性が否定できない。物件選びの際はそこをしっかりと確かめたい。

2.物件の古い・新しいにかかわらず気をつけたいいくつかのキケン

子どもが落ちやすいベランダや窓

大人にとってリスクとはなりにくいものの、子どもにとっては命にかかわる危険な状況、それが「転落しやすいベランダや窓」となる。幼い子どものいるファミリーが2階以上の部屋を選ぶ際など、じっくりと目配りしておきたい。

【参考記事】消費者庁が注意喚起 ベランダ…窓…「子どもの転落事故」に賃貸住宅オーナーも注意を

例えば、ベランダの場合……

「手すりや柵、壁のつくりや高さが、子どもがよじ登りやすいものとなっている」

「エアコンの室外機や、低い位置にある物干し金具に子どもがのぼった際、そこからさらに手すりを越え、外に転落しやすいかたちになっている」

――などが、よくあるキケンの印となる。

窓の場合、網戸の劣化や、サッシのガタつきが起きていると、転落事故の原因になりやすい。遊んでいる子どもがぶつかったり、寄りかかったりした際、網が破れたり、窓がサッシごと外れたりすることで、体が外に投げ出されてしまうためだ。サッシに外れ止めが付いていても、部品の劣化や損傷が起きていたりすると状況は同じとなる。

さらに、窓の外に柵があっても、それが劣化し、外れやすくなっているようだと、そうしたものを掴んで体重をかけたりしがちな子どもにとってはむしろ危険な状態となる。

また、低い窓枠や、子どもがのぼりやすいつくりの窓枠は、言うまでもなく転落および、窓への「寄りかかり」「ぶつかり」を誘発しやすいキケンな構造だ。

ステップが細く滑りやすいものも多い、ロフトのはしご

ロフト付きの物件を選ぶ際は、上り下りするはしごに注目しよう。なかにはステップが細く滑りやすい危険なものもある。

近年は入居者の安全のため、はしごを階段に近い形状のものに換えたり、手すりの無いはしごを手すり付きのものに交換したりする賃貸オーナーも増えているが、一方で危ないハシゴもまだ多い。

よって、「危ないはしごの付いた部屋だが、それ以外は気に入った」という場合は、「入居するので安全なものに換えて」と、リクエストするのもよい選択だろう。

気付いてる? 「窓の無いトイレ等」のリスク

子育てファミリーが気をつけたい「子どもが落ちやすいベランダや窓」に対し、こちらは一人暮らしの単身者が気をつけたい意外なポイントだ。

トイレ、バスルームといった、物件内の狭いスペースの中にいる際、内側からかけた鍵のトラブルや、突然の地震による建物のゆがみ、扉の向こうに障害物が倒れてドアが開かなくなった、などが原因で「閉じ込め」に遭う可能性がある。

その際、内側に窓があれば、建物の外に向けて助けを呼ぶこともできるが、そうでない場合、同居する家族などがいない単身者はそう簡単に助けを呼べなくなる。

よってそれが懸念されるケースでは、トイレで用を足すときなど、抵抗はあるかもしれないが「内側から鍵をかけない」――もっといえば「扉を閉め切らない」が、予防策として有効だ。

加えて、「扉の向こうが通路を隔てて壁」といった場合は、両者の間に大型で頑丈な、ともすれば障害物になりうるもの(例えば旅行用スーツケース)を置かないことも重要になってくる。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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