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八王子・アパート外階段崩落事件のその後 尊い命と引き換えに制度は一歩前進

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画像/全日本不動産協会ホームページ

あってはならない最悪の事態

昨年4月に東京都八王子市で発生したアパート外階段崩落事件といえば、ニュースをよく覚えている賃貸住宅オーナーも多いはずだ。

【参考記事】アパートの外階段崩落による死亡事故 善意のオーナーが身を守るには

建物はまだ築8年と新しかったが、ずさんな施工によって鉄骨製の階段と踊り場の接合部分に使用されていた木材に腐食が生じていた。そのため、昇降する人の重さに耐えられなくなり、ついには階段ごと崩落した。結果、入居者が転落死するという、あってはならない最悪の事態に至っている。

そこでこの1月、国土交通省が再発防止策をとりまとめ、各関連団体に通知している。内容はそれら団体のウェブサイトで確認することができる。2つの団体のページへのリンクを掲げておこう。閲覧できる内容はいずれも同じだ。

公益社団法人 全日本不動産協会
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会

3つの柱からなる再発防止策

再発防止策は以下3つが組み合わされたかたちとなっている。

「設計時における防腐措置等の内容の明確化」
「工事監理および完了検査時における屋外階段の適切な照合・適合確認の確保」
「適切な維持管理の確保」

それぞれ順に、

「木造屋外階段の防腐措置についての確認図書(建築確認審査時の提出図書)がこれまで明確に定められていなかった」
「工事監理時における屋外階段のチェック内容が、同じく明確に位置づけられていなかった」
「木造屋外階段の維持管理に関する指針等も、同じく定められていなかった」

これら建築確認等に関わる現行制度の課題が、今回の事件によって洗い出されたことにより、策定されたものだ(具体的には建築基準法施行規則および関係告示の改正が行われるなどした)。

つまり、悲しい結果ながら、亡くなった方の尊い命とひきかえに、わが国の建築物の安全性が“制度上”は、また一歩前進したかたちとなる。

調査241件中「危険」な建物は7つ

なお、上記に先んじて、昨年の6月、国交省からは今回の事件に関し、「施工会社則武地所および同社の代表者などが関与した屋外階段を有する共同住宅」を現地調査した結果が報告されている。リリースは国交省ウェブサイトの中にある「八王子市内階段崩落事故の共同住宅の施工者等が関与した共同住宅に係る調査結果等について」で閲覧可能だ。

これによると、調査対象となった物件は、事件が発生した八王子のアパートも含め241件(東京都内51・神奈川県内190)。そのうち「劣化等により危険性がある」と判断されたものは6件となっている。すでに危険性が現実となった八王子の物件を加えると計7件だ。

そこで、上記6件については、当報告書作成の時点で「所有者等へ改善指導を実施済」とのこと。さらには「鉄製階段を支える仮設の柱(支保工)の設置など安全対策が進められている」とも添えられている。ホッとするニュースといえるだろう。八王子に続く人的被害が、もしかするとすんでのところで抑えられたのかもしれない。

さらに、「外観上、直ちに所有者への改善指導を要するレベルの劣化等はみられない」とされた207件についても、それら所有者に対しては「詳細調査を要請済み、またはその予定」となっている。各々、鋭意実行されていることをぜひ祈りたいところだ。

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法的責任と一生残る悔い

以上が、八王子市で発生したアパート外階段崩落事件に関する、国レベルでの現在までの動きとなる。

一方、賃貸住宅オーナーだ。今回の事件によって「工作物責任」のことをあらためて考えさせられたオーナーも多いだろう。あるいは、初めてこの言葉を知ったという人もなかにはいるかもしれない。

危険な建物を造ったのはあくまで施工会社で、オーナーはそのことをまるで知らなかったとしても、今回の事件のようなことが起これば賠償責任は基本としてオーナーが負うことになる。あるいは、そうなる可能性が低くはない。これは民法に規定されるところの「工作物責任における所有者の無過失責任」によるものだ(第717条1項)。

また、法的判断は措くとしても、自らの物件の不備によって入居者が亡くなったとすれば、オーナーにとっては心情的にきわめて厳しい結果となる。生涯にわたっての悔いを残すことにもなるだろう。では、オーナーは何をすべきなのか?

物件の異常は入居者が一番よく知っている

もちろん、普段から物件をしっかりと見回り、異常が無いか目を配ること、さらには必要なメンテナンスを怠らないこと、賃貸住宅オーナーとして当たり前に大事なことだ。

たとえ管理会社がいても丸投げせず、自ら動くことも大切だ。加えて「施設賠償責任保険」に加入し、いざというときのためのセーフティネットを敷いておくことも重要だろう。

そのうえで、われわれからぜひ勧めたいのは「アンケート」の実施だ。「物件に危険や異常が生じていないか? 気になることはないか?」――それを入居者に尋ねてみることだ。現にそこに住んでいる人たちに聞いてみるのだ。

そう提案すると、「なるほどそのとおりだよね」と、大抵答えが返って来るが、ほとんどのオーナーも管理会社も、なぜかこれに気付いていない。

物件に存在する異常や危険をもっとも察知しやすいのは誰か? そこに住んでいる人にほかならない。このあたりまえの事実をあたりまえに踏まえるならば、やるべきことは決まっている。入居者に対し、定期的にアンケートを募ることだ。ぜひ実行してほしい。

外階段、外廊下、壁、屋根、塀……などばかりではない。漏電の発生、ガス器具の異常、ベランダ手すりの劣化、外れやすくなった高い位置の窓枠……起きうる事故は人命にかかわるほど大きくとも、入居者からの発信が無ければ、外側にはほとんど見えてこない危険も賃貸住宅には数多いのだ。 

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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