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契約書はゼッタイ? 引っ越すときの「原状回復」はどこまで求められる?

大谷 昭二大谷 昭二

2021/07/02

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イメージ/©︎hanohiki・123RF

契約書は絶対なのか?

Q.新しい部屋に引っ越しをするため、それを大家さんに伝えたところ「賃貸契約書に『いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする』とあるから敷金の戻しはありません」といわれ、逆に修理費を請求されました。

これは払わないといけないのでしょうか。

A.契約書は、言葉にすると2者以上において契約(約束事)をする際に、その内容を記し、それぞれが署名、あるいは捺印などして作成する文書で、契約には法的拘束力が付与されます。

部屋を借りるために契約した際に取り交わす賃貸契約書も契約書なので、そこにご相談の「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」と書いてあるからとそれをタテにした敷金や修繕費のトラブルはあるようです。

しかし、賃貸、借家契約での原状回復については、改正民法第621条で次のように規定されています。

(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

とあり、あくまでも賃借人が原状回復を求められるのは、「故意・過失、善管注意義務違反など「賃借人に責任」であることが明確になっています。 

また、その範囲は壁のポスターや絵画の跡、日当たりによる壁紙の自然な日焼け、冷蔵庫やテレビ背面の電気焼けなどは、原則として賃借人が負担することはありません。しかし、ペットによる柱や床のキズ、引っ越し作業でのひっかきキズ、エアコンなどの水漏れを放置したことによる壁・床の腐食は、賃借人の責任とされます。

「原状回復特約」があっても大丈夫か

賃貸契約をする際、前に説明した基本原則以上の原状回復を求める内容を「特約」として求められる場合があります。これは賃借人と賃貸人との合意によるものなので、法律違反にはなりません。こうした特約には民法や国土交通省のガイドラインに合ったものでなくてはなりません。

具体的には、

●その必要性と合理的理由があること
●賃借人が特約の内容を認識していること
●賃借人が義務負担を認識、了解していること

ということです。

また、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定もあり、その内容と合っていない特約は無効となります。

つまり、契約書に「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」といような内容や、「修繕費用の借主全面負担特約」があっても、すべての修理・修繕費を負担する必要はありません。

ただし、賃借人が関係した部分、例えば、壁紙や床の破損があれば、その部分については負担しなくてはならないため、修理費用の一部を支払う必要があります。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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