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昔からあった「道路族」の問題 なぜ深刻化?(2/2ページ)

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昔からあった道路族の問題 なぜ深刻化?

とはいえ、「道端での子どもの大騒ぎや井戸端会議など、はるか昔からあったことじゃないか。なぜ今になってそんなに深刻化しているのか?」と道路族問題に関しては、これを不思議だとする声もよく聞かれる。

たしかに、これらがもっと盛大で普通だった過去を知る目には、道路族問題はやや不思議に映る。それこそがまさに時代の違いであろう。加えていうならば、一つには、「昭和の昔は当たり前に他人の子どもを叱れたが、いまはそれができなくなっている」ことが、おそらく背景として大きいのではないか。

「他人の子どもを叱れば、即、大人同士の深い軋轢になる」

これは、昭和の時代にはかなり珍しかった、ほぼ平成以降に育まれたといっていい、社会のメンタルである。なぜそうなったのかの理由はさておき、このことは心の重い手枷足枷となって、近隣関係に悩む人における近隣関係そのものへの不安や恐れをさらに増大させている。

すなわち、子どもや井戸端会議の声が、「うるさい」を超えて、「怖い」「恐ろしい」といったように、その場での生活の未来を塞がれるような感覚のものになっている点が、道路族問題の本質では? と、個人的にはそう考えている。

ちなみに、道路族は、その多くが一戸建ての並ぶ住宅地で発生するといわれているが、道路族問題とやや似たトラブルは、賃貸住宅でも起きている。

殺人事件にまでいたった例が、この5月に発生している。東京・足立区のアパートに住む60代の夫婦のもとに、時折子どもを連れて遊びにやってくる息子の身に悲劇が起こったのだ。一家が現れるたび子どもの声がうるさいと、業を煮やしていた隣室の住人が、突然刃物を持って乗り込んだのだ。息子は刺されて死亡、幼い子どもは父親を失ったかたちとなった。

事前の細やかな対応で結果が変わる

一方、筆者が以前より面識のあった、とある賃貸住宅オーナーは運営していたファミリー向けの物件に、新しい入居者が入ると必ずある準備をしていた。

それは当人ご家族の許しを得たうえで、家族構成を周りの部屋の人にあらかじめ伝えておくというものだ。

特に、新しく入居する家族に小さな子どもがいる場合は、そのことを入念に告げ、「声や音など、ぜひご寛大に」と、お願いしていたという。加えて、「もし、困った際は遠慮なく私に」と、フォローの約束もしていた。

結果的には、これがよい結び目となることで、入居者同士のコミュニケーションが生まれ、「見知っている相手の出す音はさほどうるさく感じない」ということで、この物件でトラブルが起こることは、ほとんどなかったという。

そこに照らしていえば、道路族問題は一方が悩むだけでなく、当事者同士が直接ぶつかり合い、あいだに立つ人がいない状態となっていることも根深い要因である。

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