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超低金利時代の新常識、住宅ローンの繰り上げ返済は損をする!(2/2ページ)

牧野寿和牧野寿和

2016/11/08

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低金利時代は、繰り上げ返済の効果が小さくなる

この4つのケースからもわかるように、繰上げ返済によって返済期間が短縮できること、また早期に繰り上げ返済をしたほうが効果のあることは間違いありません。

しかし、利息の低減効果は、最も効果の大きかった【ケース1】でも、約179万円と200万円に届かない額に止まっています。しかも、【ケース1】は、融資を受けてから1年で500万円を繰上げ返済する想定になっていますので、あまり現実的なケースとはいえません。

現実的と思われる【ケース2】【ケース4】でもそれぞれ、約122万円と約109万円といった金額に止まっています。

仮に金利が3%だったとすると、返済総額は約4849万円(うち利息額が約1849万円)となり、【ケース1】の利息軽減額は約713万円、【ケース2】【ケース4】の利息軽減額はそれぞれ、約454万円、約402万円となります。

いちばん効果の小さい【ケース3】でも約48万円と4倍の効果になります。

金額の違いを比較していただければ一目瞭然ですが、超低金利時代は利息額の負担自体が少ないので、繰上げ返済の効果も小さくなるということです。超低金利を実感いただけたでしょう。

手元のお金を繰り上げ返済ではなく、運用に回した場合は?

さて、次に繰上げ返済ではなく、その資金で資産運用をした場合について考えてみましょう。

たとえば、【ケース4】で、繰り上げ返済資金を積立運用資金として、25年間毎月2万円ずつ金融商品で運用したとします。仮に、住宅ローン金利と同じ1%で運用すれば、5回目の繰上げ返済を実行する25年後には、約681万円(うち利息は約81万円)のお金が手元に残ります。しかし、繰上げ返済に資金を使ってしまえば手元にお金は残りません。

住宅ローンの支払いだけであればいいのですが、将来の教育資金や老後資金、住宅の修繕費の負担などを考えた場合、どちらが安心でしょうか?
さらに、住宅ローン返済期間である35年間、毎月2万円ずつ資産運用に回した場合を考えてみましょう。

2万円うち半分の1万円は、子どもの教育資金など現金が必要なときに備えて、すぐに引き出せるように銀行の定期預貯金などで貯蓄して、残りの1万円は、株式などの少なくとも3%程度の目標利回りで長期運用したとします。

すると35年後には、定期預貯金の金利が0%としても、420万円の貯蓄ができます。一方、運用のほうは3%で運用できたとして約737万円(うち運用益317万円)となり、合計して約1157万円のお金が手元に残るのです。

これはあくまでのシミュレーションですが、大きな差が出ることはおわかりいただけるでしょう。

当然、この資金は35年間のうちにかかる、子どもの教育資金や家のリフォーム資金として活用することができます。

もし、繰上げ返済に現金を使ってしまうと、何らかのトラブルが起きて緊急に現金が必要となった場合、どこかで融資を受ける必要が出てきます。

そうなれば、住宅ローンの返済とは別に、その分の返済も必要となり、非常に家計を圧迫することになるでしょう。


(参考記事)
住宅ローンの返済と子どもの教育資金で家計を破綻させない5つの方法

繰り上げ返済よりも将来のリスクに備えるべき

FPなどの専門家のなかにも、いまだに、「住宅ローンは繰上げ返済をしながら早期に完済すべき」と言われる人がいますが、それはひと昔前までの定説です。

この超低金利時代は、繰上げ返済よりも、その分の資金を運用に回したほうが、老後の生活資金、マイホームの修繕、建替え、住み替えといった将来のリスクに備える準備ができます。

繰り返しますが、この超低金利時代であれば、住宅ローンの金利以上の利回りで手元のお金を運用することは特別むずかしいことではありません。

貯蓄したお金を有効に活用するのなら、繰上げ返済に充てて住宅ローンの利息を軽減するより、運用に回したほうが、より現実的な資産防衛策になるといえるでしょう。

(参考記事)
リストラで住宅ローン返済ができなくなったらどうする? これだけは知っておくべき4つの対策

 

 

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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