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【フラット35】が過去最低金利を更新

イギリスのEU離脱、住宅ローン金利にどう影響する?(2/2ページ)

小島淳一小島淳一

2016/09/02

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「固定金利型」の住宅ローン金利はどう決まる?

「固定金利型」の住宅ローン金利は、“長期金利”に連動して変動します。長期金利が上がれば「固定金利型」の住宅ローン金利が上がり、長期金利が下がればそれに連動して下がる仕組みです。金融機関の多くは、毎月の中旬から下旬の長期金利の動向を見て、翌月の住宅ローン金利を決め、月初に公表しています。そのため、毎月下旬の金利の動向を見ておくと、翌月の金利の傾向がわかります。長期金利が上昇傾向にあれば翌月の住宅ローン金利は上昇し、下降傾向にあれば翌月の住宅ローン金利は下降する傾向にあるというわけです(図3)。

なお、長期金利の代表的な指標は、「新発10年物国債」の利回りで、これに連動して長期金利が変動しています。「国債」とは国が発行する債券で、市場で取引されており、その利回りは需要と供給のバランスで決まります。つまり、国債が買われると国債の取引金額が上昇して利回りが下がり、それに連動して長期金利が下がるという仕組みです。

最近では日本銀行が国債を大量に購入していることは、ニュースなどで聞いてご存知の方も多いかと思いますが、日本銀行は国債を購入することで長期金利を低く抑えているのです。

また、2016年2月から導入されたマイナス金利も住宅ローンに影響を与えています。マイナス金利とは、文字通り金利がマイナスになることで、具体的には、金融機関が日本銀行にお金を預けていると、利子がつくどころか逆に預金している分の利子を日本銀行に支払わなければならないということです(現在のマイナス金利は、金融機関に対してのものであって、私たちが利用する銀行の預金利子がマイナスになるということではありません)。

金融機関としては、それならば日本銀行にお金を預けておくよりも、ほかに貸し出して金利を受け取ったほうがよいということになります。そのため、現在、金融機関は住宅ローンの貸し出しにも積極的になっています。しかも、マイナス金利の影響で長期金利はさらに下がっていますので、住宅購入を考えている人にとっては、かつてないほどに“借りやすい”状況になっているのです。


(図3)長期金利と固定金利型住宅ローンの金利の関係

イギリスのEU離脱で住宅ローン固定金利が下がる?!

また、この6月にはイギリスでEU離脱の是非を問う国民投票が行なわれ、イギリスのEU離脱が決まりましたが、こうした動きも住宅ローン金利に影響を与えています。なぜイギリスの動きが、日本の住宅ローン金利に影響を与えるのか不思議に思う人も少なくないと思うので、簡単に仕組みを説明しておきます。

イギリスがEUを離脱すれば、イギリスの国力への信用が低下します。EUという大きな後ろ盾がなくなるわけですから当然です。
そうすると、イギリスの通貨であるポンドの価値が低下します。通貨の強さは国の力を表しています。ポンドの価値が低下すれば、これまでポンドを買っていた投資家たちはポンドを売り、他の国の通貨や国債に投資するため、日本円と日本国債も買われることになります。

こうして、日本国債が買われれば利回りが下がり、それに連動している固定金利型の住宅ローン金利も下がるというわけです。

もしインフレが起こっても「固定金利型」なら安心

ところで、先ほど「変動金利型」は利用者が金利上昇のリスクを負っているとお話ししましたが、「固定金利型」の場合、返済額は一定で金利上昇のリスクを受けません。単純に目先の金利を比較すれば、「変動金利型」のほうが低いのですが、「固定金利型」の金利も1.0%を切っている現在(2016年8月現在)では金利の差はほとんどないといえますし、返済完了まで低金利の恩恵を受けられることは「固定金利型」の大きなメリットといえます。

また、もうひとつ「固定金利型」のメリットとしては“インフレに強い”ということがあげられます。インフレとは簡単に説明すると物の値段が上がっていくことで、逆にいえば、お金の価値が下がっていくことを意味します。

日本の財政赤字が拡大を続け、ハイパーインフレを懸念する声も上がっていますが、仮にハイパーインフレが起こって物価が2倍、10倍、100倍となった場合でも、金利は固定されているので返済額は変わりません。つまり、これまで100円で買えていたものがインフレによって100万円になるようなことが起こったとしても、固定金利型の住宅ローンであれば返済額は一定なので、その負担は相対的に小さくなるということです。これは「固定金利型」の大きなメリットといえます。

多くの金融機関は、利用者が金利上昇のリスクを負担する「変動金利型」をすすめてきますし、利用者も目先の金利の低さに飛びついてしまいがちです。しかし、「固定金利型」の住宅ローン金利も十分に低い現在、「固定金利型」を選ぶことが賢い選択といえるのではないでしょうか。

情報提供元:イエトヒトマガジン(https://www.ietohito.jp/magazine/
記事名:「イギリスのEU離脱、住宅ローン金利にどう影響する?」(https://www.ietohito.jp/magazine/00000359)/
(元記事公開日 2016/08/29)

 

 

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)、相続診断士

1970年生まれ。神奈川県海老名市出身。 早稲田大学商学部を卒業後、93年、「海賊とよばれた男」の出光興産株式会社に入社。特約店経営改善計画からマーケティング・SS現場の増客増販まで一連のガソリンスタンド事業に携わる。福島県山間部での集客イベントでは3日間でガソリン10万ℓを売上、全国優秀店表彰へ導く。 その後、2000年にヘッドハンティングされソニー生命に入社。社内表彰やMDRTに連続入会、営業職最高位エグゼクティブライフプランナーに認定される。 現在は、金融機関に属さない独立系FP会社:ライフワーク株式会社の代表として、リスクマネジメントコンサルティングを中心に、各種セミナー講師として活躍中。

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